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1.実際原価計算総説
1.1実際原価の本質

実際原価は財務諸表作成のために不可欠な原価であり,財貨の実際消費量をもって計算した原価である.また,実際原価は厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが,原価を予定価格等をもって計算しても消費量を実際によって計算する限り,それは実際原価の計算である.実際原価は次のように表わすことができる.

 実際原価=(実際正常消費量)×(実際取得価格または予定価格)

1.2原価計算の形態

個別生産及び大量生産という2つの異なる生産形態に応じて,原価計算の形態も個別原価計算と総合原価計算とに区分される.

  • 個別生産においては,製品別にその製造を命令する製造指図書が発行され,この指図書をもって個別の製品を代表させて,製造活動を効果的に運営していこうとする.この個別生産に適用される原価計算を個別原価計算という.個別原価計算では,製造指図書が特定の製品を代表して,その製品の製造において発生した原価をこれに記入し,その製品の完成と同時に,製造指図書ごとに集計して,その製品原価が計算される.
  • 大量生産においては,同一種類の製品が継続的に大量生産されており,かかる生産形態に適用される原価計算を総合原価計算という.総合原価計算は一原価計算期間に製造された製品の総生産量でそれを製造するために発生した原価を按分することによって,その製品の単位当り平均製造原価を求める原価計算の方法である.それ故,総合原価計算は個別原価計算と異なり,製造指図書は製造命令書としての役割を果たすだけにとどまり,原価集計の単位とはならない.

1.3製造指図書

製造指図書は製造命令書,製作伝票とも呼ばれ,特定の製品の製造を製造部に命令するための書式である.生産企画部では,特定の製品を製造するとき,製造品目別の設計図の作成,各種材料の所要,所要作業の手順等についての製造企画を行うのである.製造現場では,この製造指図書を受け入れることによって,特定製品の製造が開始され,同時に必要な材料,労務,用役等の消費に関する権限が製造現場に与えられる.製造指図書には,特定製造指図書と継続製造指図書とがある.

  • 特定製造指図書 これは個別生産を行う企業で発行される指図書で,一定量の特定製品を製造することを命令するものである.
  • 継続製造指図書 これは大量生産を行う企業で発行される指図書で,同一種類の製品を反復継続して製造することを命令するものである.
  • 主製造指図書と副製造指図書 大規模な生産を行う場合には,工事全体の製造作業について発行される基本的指図書とともに,この工事をいくつかの作業に区分して,それぞれの製造指図書が発行される.基本的な製造指図書を主製造指図書といい,各区分ごとの作業に対しての製造指図書を副製造指図書という.
2.実際単純個別原価計算
2.1個別原価計算の概観

建設業,精密機械工業等のように受注生産あるいは請負生産を行う場合,その受注品あるいは請負品の製造原価を計算する方法を個別原価計算という.

受注生産においては,当該受注品の製造開始前に製造指図書が発行され,それにもとづいて製造が行われ,製造原価の計算もこの製造指図書にもとづいて作成されている原価計算表別に集計される.この場合,原価要素のうち直接費は直接に当該指図書番号の記載された原価計算表に賦課できるのであるが,製造間接費はなんらかの方法によって,各指図書番号の記載された原価計算表に配賦しなければならない.この製造間接費の配賦方法の相違によって,単純個別原価計算と部門別個別原価計算とに分けられる.

2.2個別原価計算の手続

個別原価計算は,原則として,「原価要素の費目別計算」,「部門別原価計算」および「製品別原価計算」の3段階からなっている.個別原価計算においては,特定製造指図書が発行されており,この製造で発生する製造原価を集計するために製造指価計算表が作図書番号の記載されている原成される.原価計算表は製造が完了すると締め切られ,製品原価を算出し,これを製品勘定,または売上原価勘定へ振り替える.また,原価計算期末に製造が未完成のときは,原価計算表の原価合計は仕掛品勘定へ振り替える.

この原価計算表(図3-1)への原価の集計は直接材料費,直接労務費,直接経費および製造間接費別に行われるので,各々の記入方法を説明することが,個別原価計算の手続を示すこととなる.

  • 直接材料費は材料庫出講求書(出庫票)の製造指図書番号によって,当該原価計算表の直接材料費の欄に記入する.
  • 直接労務費は作業時間報告書または出来高報告書の製造指図書番号によって,当該原価計算表の直接労務費の欄に直接記入するか,あるいは直接材料費と同様に直接労務費集計表に作業時間報告書または出来高報告書から記入して,その合計額を定期的に記入する.
  • 直接経費はあまり発生せず,僅かに外注加工賃や特許権使用料等の費目が直接経費として発生する.このため,図3−1の原価計算表には直接経費の欄が設けられていない.
  • 製造間接費は材料庫出請求書等の消費伝票や支払伝票等の伝票顆により把握されるが,この伝票類には製造指図書番号が記入されておらず,しかも製品の製造のために消費された原価要素である.
3.材料費会計
3.1材料費の意義と分類

材料とは,製造工程で消費される物品であり,この物品の消費によって生ずる原価を材料費という.「原価計算基準」では,次のように分類される.

3.2材料の調達

仕入先からの材料の調達には図3−2で示されているように,4種類の書類が重要な役割を果たしている.4種類の書類とは,材料購入請求書,注文書,送り状および材料受入報告書である.

図3−2 材料調達の記録

  • 材料購入請求書 材料の購入は材料購入請求書を発行することからはじまる.これは外部の仕入先からある品目の材料を調達してほしいという購買部に対する請求書である.請求材料の現在の貯蔵状況および将来の必要性を最もよく知っている者がこれを作成するのが原則である.
  • 注文書 購買係は仕入先を決定すると,注文書を発行する.注文書は原本を仕入先に送付するとともに,複写3通を作成し,1通は購買係が手許に保存し,1通は倉庫部の受入係に回付し,1通は会計係に回付する.注文書は仕入先がこれを承諾すると契約書となるので,契約書として完全な一定形式のものでなければならない.
  • 材料受入報告書 仕入先では,材料納入と同時に送り状を購買係に郵送する.この送り状には,材料の品名・規格・品質,数量,単価および金額等が記載されており,購買係から材料元帳係および会計係に回付され,会計処理のための証憑書類となる.現品が到着すると,受入係はその数量,品質およびその他必要事項について注文条件に合致しているかどうか検査し,その結果を材料受入報告書に記録する.購買係は送り状および照合済みの材料受入報告書にもとづいて材料仕入帳への記入を行う.

3.3材料の庫出

図3−3は倉庫からの材料の払出に関する会計処理手続を示している.第1段階は材料が製造に必要であるという事実の認識である.材料の必要なことが認識されると,材料庫出講求善が倉庫から材料を得るため作成される.材料庫出請求書は材料の消費についての総勘定元帳および補助元帳への記入のための原始伝票である.材料庫出請求書にもとづく材料の消費についての総勘定元帳への記入は材料諸勘定の貸方への記入と製造勘定(仕掛品勘定)あるいは製造間接費勘定の借方への記入となる.

図3−3 材料庫出の記録

3.4材料費の計算と期末棚卸材料の評価

材料の消費により,材料費が発生する.この材料費は材料の実際消費量にその消費価格を乗ずることによって算定される(材料費=材料の実際消費量×その消費価格).それ故,材料費を把握するには材料の実際消費量とその消費価格を測定しなければならない.

  • 消費量の計算 材料の実際消費量の測定は,材料庫出請求書にもとづいて行われている.この測定方法は継続記録法と呼ばれている.材料の実際消費量の測定が継続記録法により行うことが困難な場合,また継続記録法の実施が可能であっても,測定される金額が少額である場合には,棚卸計算法や逆計算法が用いられて,その消費量が測定される.棚卸計算法は定期的に材料の種類ごとに実施棚卸を行い,棚卸高を求め,これを材料の繰越高と仕入高の合計から差し引くことによって消費量を期間的に測定する方法である.逆計算法は製品単位当りの予定消費量または標準消費量を決定しておき,製品の生産量に単位当りの予定消費量または標準消費量を乗ずることによって,材料の実際消費量を推定する方法である.
  • 材料の購入原価 材料の消費価格の測定であるが,このためにはまず材料の購入原価を測定し,これにもとづいて消費価格を決定するのである.材料の購入原価は購入代価,すなわち送り状値段にその購入から庫出までに要した諸費用を加筆した価額である.すなわち,次の算式によって算定される.
 購入原価=購入代価+材料副費 

材料の購入代価を材料主費といい,材料の購入から庫出までに要した諸費用を材料副費という.この材料副費は,これを@外部副費とA内部副費とに大別することができる.外部副費とは,買入手数料,引取運賃,荷役費,運送保険料および関税等の材料の買入れに要す引取費用をいい,内部副費とは購入事務,検収,整理,選別,手入れ,運搬,移管および保管等に要した外部副費以外の費用をいうのである. 

  • 材料の消費価格(または半価) 同種材料であっても,仕入先,仕入方法,仕入条件,仕入数量および仕入時期等が異なるとき,その購入原価は異なるのが一般的である.企業が製造工程で少量の材料だけしか使用しないとき,材料庫出のつど,どの購入原価の材料であるかを確かめて,それを消費価格とすることは困難なことではない.この方法は個別原価法といわれ,注文生産のために特定の材料が消費される場合にはこの方法が適用される.しかし,通常の製造においては多種材料が多量に使われる.材料庫出のつど,材料の項目ごとに単位購入原価を識別することは実行不可能である.この場合,材料消費価格は先入先出法(FIFO),後入先出法(LIFO),移動平均法,月次総平均法および予定価格等の方法が適用され,決定される.
  • 先入先出法 これは買入順法ともいわれ,先に(古く)仕入れた材料の購入原価が先に消費された材料につけられる消費価格とする方法である.
  • 後入先出法 これは最も新しく仕入れた材料の購入原価が最初に消費される材料につけられる消費価格とする方法である.
  • 移動平均法 これは単価の異なる材料を購入するごとに,保有材料の原価と新規購入材料の購入原価との加重平均を計算し,これを消費材料の単価とする方法である.
  • 月次総平均法 これは月末に月間の加重平均単価(月初の棚卸高と月間の受入高とを合計し,これを総数量で按分して算出した単価)を算定し,これを月間のすべての消費材料の単価とする方法である.
  • 予定価格 過去の購入代価や現在の市価を基礎として将来の市価の変動を予測することによって予定価格を設定し,この価格によって一定期間(原則として1会計年度)にわたって,消費材料の原価を計算する方法である.
4.労務費会計
4.1労務費の意義と分類

企業における従業員の労働力の消費によって生ずる原価を労務費という.労務費は労働力の消費であり,一方,従業員の提供する労働力に対する対価は賃金および給料等である.ここに,労務費は提供きれた労他力(その対価は貸金)の消費であり,これを消費賃金といい,労働力の対価としての賃金を支払賃金という.

労働力の対価に対する支払形態による分類 従業員から提供を受ける労働力に対する対価は,その支払形態によって次のように分類される.

  1. 賃金−これは従業員のうち工員の提供する労働力に対して支払われる給与をいう.
  2. 給料−これは従業員のうち職員および業務担当役員の労働に対し支払われる給与をいう.
  3. 雑給−これは企業に従業員としての籍のない臨時雇いやパートタイマーの労働に対して支払われる給与をいう.
  4. 従業員賞与・手当−これは工員や職員に作業に直接関係なく支払われるものである.手当とは,家族手当,住宅手当および通勤手当等の手当である.

以上のような費目で労働力の対価が労働力の提供者である従業員に支給される.これらは労務主費と呼ばれている.これに対して,従業員には支給されないが,労働力の調達および消費に付帯して発生する費用がある.これは労務副費と呼ばれる.

労務費の分類 労務費は,その計算と管理の観点から,次のような方法で分類されている.

  1. 組織職能による分類 組織職能は,通常,製造,販売および管理に分類される.製造活動において消費された労働力である労務費は,製造原価として把握される.また,販売活動および管理活動において消費された労働力である労務費は,期間原価である販売費および一般管理費として把握される.
  2. 製品との関連における分類 特定の製品製造のために直接的に消費されたことを確認しうる労務費を直接労務費といい,識別しえない労務費を間接労務費という.
  3. 部門との関連における分類 製造活動において発生した労務費は,さらに製造工程の各部門別に分類される.

4.2作業時間および作業量の計算

従業員が提供した労働力に対する対価である賃金および給料等を計算し,支給することを一般に給与計算といい,特に,製造活動に従事する従業員の提供する労働力に対する対価を計算することを支払賃金計算という.また,労働力の消費についての計算は労務配分計算と呼ばれ,特に,製造活動での労働力の消費についての計算は消費賃金計算と呼ばれている.

出勤票 出勤票は各従業員別にその出勤時間および退出時間を1週間かあるいは2週間ずつ記録する伝票である.これは当該期間の定時作業時間数,残業作業時間数および深夜作業時間数を記録し,明示するようになっている.

作業時間報告書および出来高報告書 製品製造のために,工員が何時間,いかなる作業に従事したかを記録するために,作業時間報告書が用いられる.作業時間報告書は作業時間票とも称され,これに,各工員がいかなる作業に何時から何時までの何時間従事したかを記入する.出来高給の場合には,作業時間報告書の代わりに出来高報告書が用いられる.製造指図書番号・作業種類・作業場所,出来高,賃率および金額を記入する欄がある.製品が完成した後,工員が各自で記入し,これを製品とともに検査係に提出し,その合格印を受ける.そして従業員から賃金計算係および原価計算係に回付される.

4.3支払賃金の計算

各工員に対する支払賃金は,基本給と加給金から成っている.すなわち,

 支払賃金=基本給+加給金 

基本給計算の要素は,工員の労働の量と労働の質であり,次の算式によって求められる.

 基本給本給 =(労働の量)×(労働の質) 

労働の量とは,時間給制の場合には就業時間数,日給制の場合には労働日数,月給制の場合には労働月数,出来高給の場合には出来高(生産高や作業量)である.この労働の量を示す作業時間数,労働日数,労働月数は,前述の出勤票によって把握される.

次に,労働の質とは賃率のことであり,時間給制の場合には1時間当りの賃率,日給制の場合には1日当りの賃率,月給制の場合には1月当りの賃率,出来高給の場合には出来高単位当りの賃率である.この労働の質を示す賃率は,各工員の勤続年数,年齢,性別,学歴,技術の有無および経験等によって工員ごとに決定される.

4.4消費賃金の計算

労働力の消費の計算は労務費配分計算といわれ,企業の製造活動,販売活動および管理活動という3つの主要活動のそれぞれでいか程の労務費が発生したかを計費するのである.直接工および間接工が製造活動において,いか程の労働力を消費したかを計算することを消費賃金の計算という.消費賃金の計算は製造原価としての労務費の把握であり,次の算式により行われる.

 消費賃金 =(製品製造のための作業量)×(作業量単位当りの消費賃率) 

(製品製造のための作業量)×(作業

5.経費会計
5.1経費会計の意義と分類

経費とは,原価要素のうち材料費と労務費を除いた一切の原価要素をいう.したがって,経費の性質を理解するために,製造原価を構成する原価要素のうち材料費と労務費に含まれない費目が経費となるので,これを列挙することとする.例えば,福利費,減価償却費,保険料,修繕料,電力料,ガス代,水道代,租税公課,旅費交通費,通信費,保管料,交際費,棚卸減耗費,外注加工賃,特許権,雑費などが挙げられる. 

5.2経費の計算

経費の消費高の計算は経費の性質によって異なるが,その性質にもとづき,@支払経費,A測定経費,B月割経費,C発生経費の4種類に分類されて計井きれる.

  • 支払経費 これは原価計算期間中に発生した経費額が支払額とほぼ一致するので,その支払額をもって当該原価計算期間の負担額とする経費をいう.支払経費は,福利費,支払修繕料,支払保険料,旅費交通費,通信費,交際費,外注加工賃および雑費等が主なものである.
  • 測定経費 これは原価計算期間における消費量を計量器によって測定し,それをもって当該期間の経費額とする費目であり,電力料,ガス代,および水道代がその代表的なものである.
  • 月割経費 これは減価償却費,賃借料,保険料および租税公課等の費目であり,1会計期間あるいは1年を単位として計上されるか,あるいは支払われるものである.このため,これを月割して各月の消費高を計算するので,月割経費という.
  • 発生経費 これは原価計算期間に実際に発生しているが,支払を伴わない棚卸減耗費のようにその発生額を消費額とする経費である.

5.3経費会計の記帳

図3−4は経費会計に必要な書類および会計処理手続を示している.原価計算係は経費支払票,経費測定票,経費月割票および経費発生票を定期的にまとめ,その企業の採用する原価計算の方法に従って,経費仕訳帳,総勘定元帳,原価計算表および製造間接手元帳への記入を行う.

図 3−4 経費の会計手続

 
6.製造間接費会計
6.1製造間接費の意義

製造間接費は2種類以上の製品の製造のために全体的に発生する原価であり,発生のときにどの製品の原価とするかを識別しえない原価である.製造間接費の各費目別発生額は,材料庫出請求書,作業時間報告書,出勤票,支払伝票,経費支払票,経費測定票,経費月割票および経費発生票等の証憑書類にもとづき,製造間接費元帳の各費目別勘定口座の借方に個別に記入され,同時に材料仕訳帳,賃金仕訳帳および経費仕訳帳に記入される.製造間接費は後述する配賦基準により各製品に配賦されることとなる.以上の製造間接費会計に必要な書類および会計処理手続を図解すると図3−6のようになる.

図3−5 製造間接費の会計手続

6.2製造間接費の実際配賦と配賦基準

製造間接費の実際発生額は各種製品の製造において発生した原価であるので,なんらかの基準により各製品へ配賦することが必要である.これを製造間接費の実際配賦という.製造間接費の配賦基準として,一般に,@直接材料費基準,A直接労務費基準,B素価基準,C生産量基準,D直接作業時間数基準およびE機械運転時間数基準等が用いられる.

6.3製造間接費の実際配賦の欠陥

上述の製造間接費の製品への実際配賦は,その実際発生額および配賦基準の実際数値を把握し,原価計算期末に行われる.しかし,その時点までに発生したすべての製造間接費が,当該勘定において把握されているとは限らない.その他,この実際配賦には次のような欠点がある.

製造間接費の実際発生額が製品に配賦されるとき,製品単位当り製造間接費は原価計算期間ごとに変動することとなる.これは月次の財務諸表作成における棚卸資産価額および期間損益に影響を与えるし,その結果として,経営上の意思決定にも影響を与えるのである.

特定の経営意思決定においては,製造間接費の実際発生額が算定される原価計算期末まで,その費定を延期することができない場合がある.

経営管理者は製造間接費の発生額が期末に算定されるまで,特定製品の原価の計算を待つよりも,その製品が完成した時点で,その原価を知ることを望んでいる.これは製品製造による利益がいか程であるかを知りたいからである.

製造間接費の実際発生額を製品に配賦することについて以上述べた欠点は,製造間接費の発生前に,製品へ配賦する製造間接費を予定あるいは見積り,予定配賦を行うことによって解決される.すなわち,予定配賦率を設定し,これを各製品の実際配賦基準数値に乗ずることによって製品への配賦するのである.

6.4製造間接費の予定配賦

製造間接費の予定配賦を行うには,予定配賦率の決定が必要である.予定配賦率を決定するには,一定期間(通常は1か年)の製造間接費を見積ることと,その見横の前提となる基準操業度の予定とが必要である.この操業度は直接材料費,直接労務費,素価,直接作業時間および機械運転時間等の配賦基準数値によって表わされる.すなわち,製造間経費の予算が予算設定のための基準操業度である予算操業度のもとで編成され,次いで,予算操業度における製造間接費予算を予算操業度でもって按分することによって予定配賦率が算定される.

6.5製造間接費の配賦差異の分析と処理

製造間接費を予定配賦で各製品に配賦する場合,原価計算期末には予定配賦額合計と製造間接費実際発生額との間に,通常,差異が生ずる.すなわち,予定配賦額は製造間接費配賦表で各製造指図書番号別に計算され,各指図書別予定配賦額がそれぞれの原価計算表の製造間接費欄に記入される.月末に予定配賦合計額が次のように仕訳される.

(製  造) ×××  (配賦製造間接費) ×××

そして予定配賦額は次の仕訳により,配賦製造間接費勘定から製造間接費勘定に振り替えられる.

(配賦製造間接費) ××× (製造間接費) ×××

かくして製造間接費勘定の借方には実際発生額が,貸方には予定配賦額が記入され,差異が製造間接費勘定で算定されることとなる.この差異を製造間接費配賦差異という.予定配賦額が実際発生額よりも多額(超過配賦)のとき,有利差異(貸方残)といい,少額(配賦不足)のとき不利差異(借方残)という.この製造間接費配賦差異は次のような原因によって発生するである.

 @ 製造間接費実際発生額と実際操業度での予算額とが相違する.          

 A 実際操業度と予算操業度とが相違する.

 B 季節的要因がある.