2000年12月1日朝日新聞朝刊掲載

プロ野球よ!C「株公開し球団経営活発に」

大阪大学社会経済研究所 大竹文雄


Q:巨人が強すぎるのではなく、他球団が経営努力をしていないだけだという指摘があります。

 「巨人だけが、努力しただけもうかる仕組みになっているからです。他球団は少々順位を上げたところでテレビの放映粋が増えるわけでもなく、収益にはね返らない。だから巨人人気にただ乗りするだけになる。系列テレビ局を持っている巨人の場合は、勝率を上げることが視聴率アップに直接つながり、収益拡大につながる。しかし、例えば放映権は日本野球機構が一括で管理して、その収益を順位に従って分配することにすれば、他球団のやる気も上がるでしょう」

Q:思い切った改革が必要なのですね。

 「もっと言えば、やる気のない球団経営者には市場原理をうまく使って退いてもらう。球団の株式を公開し、球団売却をしやすくするのです。巨人人気にただ乗りを続けている日本に比べ、大リーグは競争が盛んです。シアトル・マリナーズの経営権を任天堂が取得し、ルパート・マードック氏がロサンゼルス・ドジャ−スを買収した例もあるように、外資系が株を買って経営に乗り出して来てもいい。例えば、ケーブルテレビなどのメディアを持つ資本が経営に参画すれば、球団に放映権料が入るなど別の戦略を立てられるようになります」

Q:かつての巨人のV9(1965年から73年まで日本シリーズ九連覇)の時も、巨人が強すぎると言われていました。

 「当時は野球以外に代替的なスポーツがあまりなかった。でも今はサッカーや大リーグなどが衛星放送で楽しめます。一流選手同士の対戦が減ってプロ野球の質が低下すれば、ほかのプロスポーツへ人気がシフトするでしょう」

Q:今年の日本シリーズなどを見ると、ファンは常勝巨人を喜んでいるように見えます。

 「確かに、日本人は『水戸黄門』やプロレスのように、最後に善玉が勝つ予定調和を好みます。しかし、これも行き過ぎれば一極集中状態になり、巨人だけが栄えて他球団は弱体化する。プロ野球界をひとつの産業と考えれば、衰退の危機といえます」

Q:巨人の一人勝ちを抑えるには、どうすべきでしょうか。

 「世界のプロスポ−ツやJリーグを参考に戦力の均衡を図ることが必要です。例えばJリーグのように一部、二部の入れ替え制にする。Jリーグを見れば分かるように、下位チームは二部落ちしないため、二部チームは昇格のために必死で戦うだろうし、強化にも努める。逆に巨人のように強いチームは、シーズン中に例えばアジア選手権のような国際大会への参加を義務づけ、試合数を多くするという“ハンディ”も取り入れるべきです」

(聞き手:運動部 稲崎 航一)