研究活動

研究概要

これまで伝統的な経済学では、人々は金銭的なインセンティブにどう反応するかという点に着目してきた。しかし、人間は、互恵的な行動すべきとか、利他的な行動をすべきという社会規範に基づいて行動することが近年の行動経済学の研究の蓄積によって明らかにされてきた。本研究プロジェクトは、社会規範や公共心に影響を与える制度とは何かを行動経済学の枠組みから考える。本研究プロジェクトは、<実験室実験研究>と<フィールド実験研究>の2つのプロジェクトから構成されている。

<実験室実験研究>では、ワクチンを寄付するならどこまで報酬をあきらめるかを社会規範や公共心の指標とし、市場調整機能や様々な制度(投票ルールや委任・委託制度)の導入がその指標に与える影響を実験室経済実験の手法から検証する。更に、実験結果の頑健性のために「生命にかかわる寄付」(ワクチンなど)の代わりに「生命にかかわらない寄付」(本の贈呈など)を社会規範や公共心の指標に使うことによって被験者の選択行動が異なるのかも検証する。

<フィールド実験研究>では、地域住民による自律的防災・減災システムには、個々人の単独活動と地域社会全体の協働活動の二側面があるなかで、情報の精密化や伝達の迅速化が個人の行動と社会全体に与える影響(長所および短所)を現地(フィリピン・モデルバランガイ)での事例調査から明らかにする。また、経済実験の手法を用いて世帯の被災リスク回避性向と防災への関心の関係を明らかにし、「コミュニテイーの連帯強化と洪水対策」のための自然条件や災害情報伝達の仕組みづくりに役立てる。