Christensen-Feltham テキスト紹介
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このページは Ceaver が注目する会計理論テキスト Christensen, P. O. and G. A. Feltham. 2002. Economics of Accounting. Kluwer Academic Publishers. を紹介するページです。ここでいう会計理論は、会計という現象を経済学という道具を使って分析するものです。
Chapter 1: Introduction to Information in Markets (p. 1 - p. 26)
Chapter 2: Single Person Decision Making under Uncertainty (p. 29 - p. 70)
- イントロダクション
- 「不確実性がなければ、情報の役割は存在しない。したがって、市場や組織における会計情報の役割を考察する際には、意思決定者が彼らのとる行動の結果に関する不確実性に直面していることを常に認識しなければならない。」(p.29)・・・ということで、タイトル通り、「不確実性のもとでの単一個人の意思決定」を扱っています。
- 具体的には、2.1と2.2で不確実性、2.3で意思決定者、2.4でリスク回避的な意思決定者一般、2.5でリスク回避的な意思決定者の中でHARA族な方々、2.6と2.7で応用モデル(3章以降で使うみたい)、2.8で「くじ」の比較、を扱っています。これらをどのように数学的に表現するかを学ぶのが第2章の主な内容です。
- 2.1 Representation of Uncertainty
- 不確実性を数学的に表現するためには、確率が必要になります。まず、確率空間を、全事象、σ-集合体、確率の3つから成るものとします。ここで、σ-集合体は・・・、確率は・・・という定義です。標準的な確率論は、ルベーグ積分を勉強しないと理解できないようになっていますし、Ceaver は理解していないので、そのあたりからの解説はできません。ただ、σ-集合体が分割(partition)に対応していて、それが情報というか個人の知識をモデル化する際にコアの概念となることだけ、よく理解しておけばよいかと。詳しい説明はまた今度(いつ^^?)。
- 2.2 Randaom Variables
- 確率変数の説明です。重要なのは、確率変数の確率は分布関数で完全に表すことができるということでしょう。分布関数のちゃんとした定義も載っていますが(p. 33- p. 34)、さしあたり、分布関数については、p.35 - p. 38 の3つの例(かなり簡単)が理解できれば問題ないと思います。Lebesgue-Stieljes integral とか書いてあってドキッとしますが、さらっとパスしましょう。
- 例を使って用語の整理をしておきます。サイコロを2回ふって、出た目の合計を考えることにします。このとき、全事象は、(1,1),(1,2),・・・,(k,l),・・・,(6,6)の36通りあります。(・,・)の中の2つの数字は1回目と2回目のサイコロの目です。このとき、確率変数 X は、X(ω)=K+l とあらわすことができます。ここで、ω = (k,l) です。
- 2.3 Representation of Preferences
- 人の選好(好み)を数学的に表現します。特に、不確実性の下での意思決定問題がメインの話ですので、そのような状況で応用上よく使われる期待効用関数による表現が、どのような条件を満たす選好であれば問題ないのかを理解することが重要です。
- 重要なのは Proposition 2.1 で、これはいわゆる期待効用定理です。ただ、ここでは結果だけ理解しておけばよいでしょう。しっかりやるのはミクロ経済学の授業ということで。
- Proposition 2.1:人の選好が、Interest, Completeness, Transitivity, Monotonicity, Continuity, Substitution の6つの仮定を満たすならば、その人の選好は期待効用関数で表現することができる。
- 注:なぜか、ミクロ経済学の標準的なテキスト(Kreps (1990) とか、Mas-Colell et al. (1995) とか)ではなく、DeGroot (1970) にしたがっている。そういうわけで Ceaver が Mas-Colell et al. (1995) で勉強したときの仮定(Completeness, Transitivity, Continuity, Independence)と微妙に違う。同値なのだと思うけど。
- Proposition 2.2 は次の証明でも可と思います。ここ。
- 2.5 HARA Utility Functions
- 2.6 Mean-Variance Preferences
Chapter 3: Decision-Facilitating Information (p. 71 - p. 109)
- pigaga氏のレジュメ参照。ここから。[06/08/2003]。
Chapter 4: Risk Sharing, Congruent Preferences, and Information in Partnerships (p. 111 - p. 140)
Chapter 5: Arbitrage and Risk Sharing in Single-period Markets(p. 143 - p. 183)
- ファイナンス理論に触れてない場合、津野義道 (2003) 『ファイナンスの数理入門』共立出版の第1章から第3章を最初に読みましょう。[09/03/2003]。
Chapter 6: Arbitrage and Risk Sharing in Multi-period Markets(p. 185 - p. 222)
Chapter 7: Public Information in Multi-Period Markets(p. 223 - p. 252)
- ハードです。ただ、Feltham のあんまり注目されていない論文が細かく説明されている部分は無視してよいかと。
Chapter 8: Production Choice in Efficient Markets(p. 253 - p. 275)
Chapter 9: Relation between Market Values and Future Accounting Numbers (p. 277 - p.313)
- 近年、会計研究で注目されている Ohlson やら Feltham の研究が解説されている章。ここは参加メンバーも他の箇所に比べかなり興味があることから、じっくり進んでいくことになった。ただ、Ohlson (1995:CAR) ではなく、Feltham and Ohlson (1999:AR) に基づいた展開となっている。Feltham and Ohlson (1999:AR) は、離散型とはいえ、現代ファイナンス理論の展開、つまり(無)裁定概念から資産価格理論への展開を前提にしているため、そちらの理解が必要になってくる。
- O氏のレジュメはここ。[01/07/2004]。
Chapter 10: Relation between Market Values and Contemporaneous Accounting Numbers (p. 315 - p.363)
- いわゆる Ohlson モデルです。残余利益評価モデルと区別しましょう。詳細はまた。。。
Chapter 11: Impact of Private Investor Information in Equity Markets (p. 367 - p. 418)
- ここから Part C です。Gossman and Stiglitz (1980; AER) の有名なモデルと、それを応用した会計研究の紹介です。
Chapter 12: Strategic Use of Private Investor Information in Euity Markets (p. 419 - p. 444)
- Kyle (1985; Econometrica) の有名なモデルと、それを応用した会計研究の紹介です。このあたりは、経営者のディスクロージャーという視点からですが、そのうちサーベイを書く予定。
Chapter 13: Disclosure of Private Information by an Undiversified Owner (p. 448 - p. 500)
- ここから Part D です。シグナリングモデルを応用したディスクロージャーモデルの紹介。シグナリングモデルでは、分離均衡をディスクロージャーと解釈しているようです。個人的にはあんまり納得いきませんでした。
Chapter 14: Disclosure of Private Information by Diversified Owners (p. 501 - p. 541)
- ディスクロージャーの基本モデルの紹介。このあたりの内容は、共著でサーベイを書いたことがあります。関心があれば・・・探してください^^/~。
- この章の出来はスバラシイです。目からウロコでした。
Chapter 15: Disclosure of Private Information in Product Markets (p. 543 - p. 579)
- 寡占市場におけるディスクロージャーモデルの紹介。このあたりの内容は、現在、共著でサーベイを書いております。まだ完成までしばらくかかりそうですが^^/~。
- 一番最後のサマリーのような文章を最初から書いてくれれば・・・。