『会計ディスクロージャーの経済分析』
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椎葉淳・高尾裕二・上枝正幸著『会計ディスクロージャーの経済分析』同文舘出版、の紹介ページです。同文館のサイトでは、ここ。amazonではここ。
- [09/28/2013] 本書第5章で不十分だった説明を補足する内容を含む論文を公表しました。三輪一統・呉重和・椎葉淳 (2013),「製品市場における企業の情報開示行動-Darrough (1993) のレビューと考察-」『大阪大学経済学』第63巻第2号, pp. 91-118.
- [07/31/2010] 出版しました!
- [06/20/2010] 椎葉淳・高尾裕二・上枝正幸著『会計ディスクロージャーの経済分析』同文館、が2010年7月発売予定です。よろしくお願いいたします。
補足
- 会計学者、会計学専攻の院生の方へ
- 数式展開を詳しく書いてはいますが、標準的な経済数学とゲーム理論については本書で解説していません。これらの内容については、かなり基礎的な内容から専門家による解説書が存在していることがその理由です。たとえば、もっとも基礎的なレベルであっても、次のような書籍が存在しています。
- 『経済学で出る数学 高校数学からきちんと攻める』日本評論社。(あまぞん)
- 松井彰彦『高校生からのゲーム理論』筑摩書房 。(あまぞん)
- ただし、本書を読むためには、これらよりはもう少し上級の、経済学専攻の大学院1年生レベルのテキストの内容を、少なくとも一部は理解していることを前提にしています。たとえば、次の著書などが参考になると思います。
- Chiang, A. C. and K. Wainwright 著. 小田正雄,高森寛,森崎初男,森平爽一郎訳『現代経済学の数学基礎』シーエーピー出版。(あまぞん)
- Gibbons, R. 著. 福岡正夫,須田伸一訳『経済学のためのゲーム理論入門』創文社。(あまぞん)
- 一方、本書で必要となる確率・統計(少し複雑な条件付き期待値や切断正規分布の期待値・分散の求め方など)は、コンパクトにまとめられた著書が、わたしの知る限りですが存在しないとの認識から、数式展開をかなりくわしく書きました。
- このため、確率・統計などについては非常に基礎的な解説があるのに、ゲーム理論については解説が全くない、というバランスになっています。
- 経済学者、経済学専攻の院生の方へ
- 本書は「まえがき」(下記参照)に書いてあるように、経済分析に興味を持つ、しかし経済分析についての知識が少ない会計学者に向けて、非常に限られたトピックを数式展開をなるべく飛ばさずに書いています。このため、経済学者や、大学院1年生レベルの経済学の知識のある経済学専攻の大学院生にとっては、非常に冗長な内容になっています。これらの方で本書のような内容に興味のある方は、より上級の次のような著書を参照することをオススメします。
- Brunnermeier, M. K. 2001. Asset Pricing under Asymmetric Information - Bubbles, Crashes, Technical Analysis and Herding. Oxford University Press, (著者による紹介ページはこちら)
- Vives, X. 2008. Information and Learning in Markets: The Impact of Market Microstructure. Princeton University Press.(あまぞん)
- [06/20/2010]作成。
補足の追記([06/25/2010]作成)
- その他一般の方へ
- 本書は上記or下記のとおりの目的になっていますので、まず間違いなく「思ってた内容と違う」というふうに期待を裏切ることになるかと思います。ご注意ください。
「まえがき」の一部(初稿バージョン)
本書は,今後ますます重要となるであろう会計分野で展開されている会計ディスクロージャーに関連する分析モデル(本書では「情報開示モデル」とよぶ)について,会計学に関心をもつ人々が,その内容を効率的に理解し体得することを目的に上梓されたものである。
21世紀に入り,会計分野においても,海外のジャーナルを中心に,会計ディスクロージャーをテーマとする分析的研究が増加する傾向が顕著である。わが国の会計研究においても,グローバルな研究レベルを維持し向上させるためには,このような傾向を無視することはできず,分析的研究に主たる関心をもつ場合はもとより,アーカイバル研究(または実証研究)・実験研究を本業とする場合であれ,分析的研究の成果を理解し把握しておくことが不可避な研究環境にある。
とはいえ,われわれ自身もそうであるように,まずは簿記の仕組みを学び,順次,「概念フレームワーク」なり個々の会計基準を解釈し理解するといった学習プロセスを踏むことの多い(財務)会計の専門家なり,将来の専門家を目指す人々にとって,一般的に,分析的研究の成果を自分なりにある程度納得したうえで理解することはさほど容易なことではない。さらにわれわれ自身の経験からいえば,多くの分析的研究論文では暗黙の共通事項とされていたり紙幅の制約もあって,数学付録(Appendix)がはしょられ省略されることも少なくなく,数学付録を丹念に追って理解してやろうと意気込む場合ですら,論文に取り組むやいなやその意味が全く不明で理解の手掛かりすら得られず,また数学付録の行間を自分なりに埋めることができず,断念してしまうケースも少なくない。
「情報開示モデルを,さほど苦労せずまた時間もとらず,ある程度自分なりに納得した形で理解するための手助けとなるような,たとえば,これらのモデルにおいて多用される正規分布のもとでの条件付き期待値の求め方などにまでさかのぼって解説したテキストがあれば・・・」という思いは,共著者のうちの年長者である高尾にとりわけ強かった。共著者で,かつて本書第3章に関連する「経営者の戦略的情報開示-基本モデルのレヴュー-」(『大阪大学経済学』第51巻第4号,2002年3月)を執筆した経験を幸いに,この論文を大きく膨らまし展開する形で,また会計分野における情報開示モデルを構成する他の主要なタイプのモデルも守備範囲におさめ,かつ数学的な展開の解説にも十分配慮したテキスト作成のご無理を,科学研究費補助金「基盤研究(一般)(B)」(課題番号19330096)を得たことを契機に,自身の研究を一層進展させたい時期に相違ない若いお二人にお願いすることにした。
<以下略>