第49回OFC講演会

演題

地球環境問題に関する国際交渉 ~イルカさんとウナギくん~

開催日時/場所

平成27年6月12日(金)午後6時半~ /大阪大学中之島センター7F 講義室703

講師

外務省参与 地球環境問題担当大使  堀江 正彦 氏

プロフィール

  • 1969年大阪大学経済学部卒業。
  • 1971年チューレイン大学経済学修士課程終了。
  • 1973年大阪大学法学部を卒業し外務省に入省。
  • 2012年4月より 外務省参与(地球環境問題担当大使)、明治大学特任教授、筑波大学客員教授、
    京都大学特任教授などを務めるとともに、国際自然保護連合(IUCN)理事、
    国際連合「万人のための持続可能なエネルギー」(UN/SE4ALL)の諮問委員会のメンバー
    でもある。

講義風景

講演要旨


 今週月曜日(6月8日)に、ドイツでG7サミットが開かれ、安倍総理が2030年に向けて、日本のCO2排出量を26%削減することを明確に発表された。国内ではその内容についてパブリックコメントを受付期間中でありタイミングの良い講演会となった。

○ 人口増加
 世界人口は現在70億人。過去を振り返ると、人口が10億人に達するまでに1万年かかったが、近年20億人になるのにわずか130年、30億人には30年、40億人では15年、50億人に到達するのに12年と急激に増加し、今や70億人を突破している。それに伴って、世界の消費も急速に増加しており、エコロジカルフットプリントで見ると地球に負荷がかかりすぎていることになる。特に先進国の消費で顕著に表れている。1990年時点ではすでに人口50億人、地球1.2個分の消費、CO2排出量200億トンの状態であった。それより先、1972年には、ローマクラブから「成長の限界」なる報告書が出され、地球の資源は限りある、このままでは生き延びることが出来ないと警告を発せられていた。その後の1992年リオでの地球サミットで気候変動問題が本格的に議論されるようになった。ちなみに今後も今の生活を続けると2020年では、地球1.8個分、2050年には2.8個分必要となると推計されている。今年さまざまな国際交渉をしている大きな問題は、今日のテーマの気候変動と、開発とりわけ貧困の問題である。貧困の問題も気候変動、環境問題と大きくかかわっている。

○ 地球環境がどうかわってきたか CO2の増加
 地球温暖化の原因は、今では人為起源の温室効果ガスの増加であるとほぼ断 定できる。この温室効果ガスは過去80万年間で前例のない水準まで増加しており、特に産業革命以後急速に増加、その増加傾向は、近年になるほどうなぎ上りの状態である。温室効果ガスの90%はCO2である。温暖化による異変の現状を見ると、過去100年間に世界平均気温が0.85℃上昇、海面水位は19cm上昇となっており、21世紀末までに温暖化の進行が抑えられたとしても0.3~1.06℃上昇、最も進んだ場合2.6~4.8℃上昇、海面水位も45~82cm上昇するし、干ばつや洪水、台風などの異常気象は頻発、増大の恐れがあり農作物、疫病媒介生物生息範囲拡大など生態系への影響が深刻になると予測されている。

○気候変動に関する国際枠組み
 大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるため、各国共に責任を有しているものの、先進国、途上国の取り扱いを区分し、差異のある責任を果たすよう求めた気候変動枠組条約が1994年3月に発効され、締約国は195か国・機関に及んだ。その後、1997年京都で開催されたCOP3で京都議定書が採択された。締約国は192か国・機関である。そのなかで、先進国は1990年比で2008年から5年間で一定数値削減することを義務付けた。(日本6%減、米国7%減、EU8%減など)しかし、中国、インドなど開発途上国は削減の義務はあるものの数値目標義務は課さず、米国は署名したものの未締結のまま、2005年2月に発効したが、カナダは2011年に脱退を表明した。世界のCO2排出量を見ると基準年の1990年209億トンが2009年293億トンと増加しているが、義務を負っている先進国の排出割合は減少、中国、インドなど削減目標義務のない発展途上国の割合が増加している。この状態ではもう限界があるとして、我が国は、米国や発展途上国も含めた削減目標の設定する新しい枠組みが必要であると主張した。ちなみに、我が国の温室効果ガス排出量は約束期間(2008~2012)平均で基準年比8.2%減(速報値)と議定書の目標を達成する見込みである。

○新たな枠組み作り
 COP17として全ての加盟国に適用可能な議定書、法的文書または法的効力を有する合意成果をCOP21で採択し2020年から発効させる。そのためには遅くとも2015年中に作業を終了させようと決めた。現在各国は年末のCOP21パリ会議に向けて削減目標を表明している。日本は先のサミットで2013年比2030年に26%減の目標を発表した。各国が表明している削減目標では、今後の気温上昇を2℃以内に抑えることは難しいだけに、さまざまな交渉グループ間で調整が図られている。

○地球絶滅の危機
 地球温暖化が進むと不可逆的リスクが発生する。さまざまな影響は動植物に出始めているが、やがては人類にも及び地球絶滅の事態にもなる恐れがある。 IUCN(国際自然保護連合)発行のレッドリストでは、絶滅種、絶滅危惧種などカテゴリー別に日本ウナギ、イルカ、太平洋クロマグロ、ホッキョクグマなどをリストアップして、警鐘を発している。
<私と貴方で自然を見守りましょう!
        I You See Nature !> 
イルカのWe Love You Planet ! を聞いて講演の締めくくりとなった。

*この講演要旨は、OFC事務局の責任で編集したものです。

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