第66回OFC講演会

演題

コロナ禍・ウクライナ情勢下での関西経済の状況等

開催日時/場所

2022年11月17日(木)14:30~/阪急グランドビル26階 会議室5・6号室

講師

近畿財務局 総務部 経済調査課長 塩士 泰啓 氏

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プロフィール

    昭和63年4月に大蔵省(現:財務省)近畿財務局に入省。平成7年7月から平成13年6月まで本省主計局にて予算編成等に携わる。その後、近畿財務局にて財政系統や金融系統など幅広い業務を歴任。平成25年7月会計課課長補佐、平成27年7月上席金融証券検査官、平成28年7月人事課課長補佐、平成30年7月理財部主計第2課課長、令和2年7月本省主計局総務2係主査を経て、令和4年7月から現職。

講義風景

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講演要旨

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 本講演では、最初に世界経済と日本経済を俯瞰したうえで、足下の関西経済の動向や今後のトピックスなどについて、説明していきたいと思います。
 世界経済は、長引く新型コロナウイルスのパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻による供給制約、物価高騰などにより、多くの国でインフレ抑制のための金融引き締めが行われており、IMFやOECDなどの国際機関による経済見通しでは、2022年から2023年にかけて世界経済は低成長が見込まれています。
 日本経済については、資源高の影響などを受けつつも新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、持ち直していますが、先行きについては、世界経済の下振れが日本経済を下押しするリスクとなっていることや、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
 ここで、本題である関西経済について、中長期的に振り返ってみます。近畿の域内総生産の全国シェアをみると、大阪万博が開催された1970年度の19.3%をピークに低下傾向となり、東京一極集中等を背景として、足下15%台まで低下しています。また、2000年から2020年の間で、近畿に本社を置く大企業法人数は、製造業を中心に半減しています。このような状況の下で、長年、関西経済の「地盤沈下」といったことが言われてきたところです。
 こうしたなか、拡大が続くインバウンド需要を近畿は確実に捉えたことや、また、高い技術力で独自の強みをいかし、国内外との差別化を図ることなどで高成長を続ける企業も多く、関西経済は、緩やかに持ち直しつつありました。 特にインバウンドでは、近畿を訪れる訪日外国人は2019年に1,321万人まで増加、その旅行消費額は1.2兆円を超えると推計され、いずれも全国や関東を上回る伸びをみせていました。こうしたインバウンド需要は、百貨店やドラッグストアなどの小売業や、ホテルなどの宿泊業をはじめ幅広い分野において消費や雇用等の面で関西経済に良い影響をもたらしていました。
 ところが2020年に発生したコロナウイルスのパンデミックにより、社会経済活動が抑制されたことで、個人消費は急速に減少し、生産活動も停滞しました。また、インバウンド需要が剥落し、大阪市内の繁華街を中心に商業地価は大きく下落するなど、関西経済は極めて厳しい状況となりました。
 しかしながら、最近の関西経済の動向をみると局面が変わりつつあるのではないかと思います。当局が四半期毎に公表している「管内経済情勢報告(令和4年10月判断)」で、各判断項目を見ますと「個人消費」は、ウィズコロナの新たな段階への移行に伴い、百貨店、コンビニなどはコロナ禍前の水準に戻しつつあることや、管内企業の「生産活動」を見ても、供給面での制約が緩和しつつあることから持ち直しています。「雇用情勢」は、有効求人倍率は緩やかな上昇が続いており、失業率は前年を下回る水準で推移しているなど改善が続いています。
加えて、当局が四半期毎に公表している「法人企業景気予測調査(令和4年7-9月期)」をみますと、令和4年度は全産業(製造業・非製造業の計)で、対前年度実績比で売上高+6.8%、経常利益+6.0%と増収増益の見通しとなっており、また、設備投資についても全産業で対前年度実績比+22.2%の見通しと、大企業を中心に企業業績の改善に加え、積極的な設備投資姿勢がうかがえます。
 一方、中堅・中小企業を中心に原材料価格の価格転嫁が進んでいないことや、消費者物価の上昇に賃上げが追い付いていないことが課題となっています。
 こうしたことから、令和4年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」では、「物価高騰・賃上げへの取組」として、電気代等の高騰の激変緩和措置や、適切な価格転嫁に向けた公取委等の体制強化や、賃上げにつながる生産性向上等を支援する補助金等が盛り込まれました。
 今後は、こうした政府による取組みに加え、関西では、令和4年10月から入国制限が緩和されたことに伴うインバウンドの再興が期待できます。また、令和7年4月の大阪・関西万博の開催に向けて、万博会場やパビリオンの工事が行われるほか、大阪メトロ中央線の夢洲までの延伸、阪神高速「淀川左岸線」の整備など、様々なインフラ整備が行われます。そのほか、本講演では万博のコンセプトである「未来社会の実験場」の具体化に向けた「2025年大阪・関西万博アクションプラン」で掲げられた次世代エネルギーである水素の活用を先進的に進めている企業の事例などを紹介しました。
 ポストコロナの新しい経済社会の実現に向けては、こうした取組みが、大阪・関西だけではなく、日本経済全体の更なる発展の契機となることに期待しています。

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