第67回OFC講演会

演題

大阪大学・関西スタートアップエコシステム形成にむけて

開催日時/場所

2023年5月31日(水)午後6時00分~ /学士会館(東京一ツ橋)2F 203号室

講師

大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役    清水 速水 氏

shimizu

プロフィール

    1987年伊藤忠商事株式会社入社 
    工作機械、半導体関連ビジネスを経て、2000年よりITを活用したバイオ・ライフサイエンス事業の立上げを行う。 社内起業により、バイオテクノロジー、医療支援の2社を立上げた他、産学連携事業、ファンド及び国内外への投資活動を行う。
    2019年11月より大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社に参画。

講演要旨

 

 本講演では、大阪大学及び関西におけるスタートアップエコシステム構築における大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(以下「OUVC」)の活動状況及び役割について説明させて頂きます。

 政府が出資金を負担する官民ファンドは現在14あり、OUVCはその中の1つである「官民イノベーションプログラム」に属している。官民イノベーションプログラムは政府が国内4大学(東北大学、東京大学、京都大学及び大阪大学)に合計1,000億円を拠出しており、大阪大学には166億円が拠出され、研究成果の社会実装を実現すべく、研究成果段階からの支援、民間が負担できない事業リスクを負担する事を前提に投資・事業育成を行うOUVCが設立され、2015年7月に総額125.1億円のOUVC1号ファンド、及び2021年1月に総額106.5億円のOUVC2号ファンドが設立されている。
OUVCの設立意義として
 ●社会的意義の高い研究成果の発掘と投資による社会課題を解決する新たな産業の創出
 ●事業加速のための、新たな経営者創出・事業拡大による雇用促進・地域経済の活性化
 ●リスク投資及びハンズオン支援を行う事による民間VCや事業会社への呼び水効果
が設定され、大阪大学及び、その他国立大学の研究成果を基にしたスタートアップへの投資を行っている。
 OUVCの投資分野は、創薬・医療分野が約60%超となっている。これは医学部を有する国立大学においては総じて創薬・医療分野のスタートアップの比率が高まるが、大阪大学は他大学に比較し、医工連携が進んでおり、研究成果は工学・情報系で応用分野が医療という特色あるスタートアップもあり、非常にユニークである。また計測・量子コンピューティング・プラズマ核融合と将来の産業構造を大きく変えるスタートアップも生まれており、OUVCとして常に最先端の研究成果に触れ、社会実装を投資という手段で実現すべく日々大学の研究者の方々とのコミュニケーションをとっている。
 投資ステージにおいても、OUVCが事業育成・資金調達においてVCの中心的な役割を果たすリードVCとして投資する割合も60%超となっており、事業・ファイナンスの両面からサポートする役割を担っている。
 2023年4月末において、OUVC投資先は48社となっているが、その内4社が上場を実現しており、官民ファンドイノベーションプログラムにおいてしっかり実績を出している。またファンドの出口戦略ではM&Aも重要な選択肢として位置付け、戦略的なM&Aを含め3社以上の実績を有している。
 ただ、スタートアップを取り巻く環境において、経営人材の不足が共通の課題として挙げられ、この経営人材不足は東京以外の都市に顕著になってきている。数字で示すと、東京の人口約1,400万人に対し大阪は880万人であり、国内総生産(GDP)は東京115兆円に対し大阪41兆円(2022年)であるが、スタートアップ投資においてはどうか?
 国内のスタートアップに対する投資額は約8,700億円(2022年度)となっており、東京が4,000億円超に対し、大阪は約250億円となっており、圧倒的に東京一極集中となっている。資金調達の中心が東京になれば人材・研究成果も必然と東京集中となっているのが現実である。現在この現状を打開すべく公益社団法人関西経済連合会、一般社団法人関西経済同友会等も巻き込み京阪神スタートアップエコシステム事業を展開している。
具体的な施策として
 ●関西の大学発シーズと産業界とのマッチングによる事業化の加速
 ●経営人材育成支援
 ●研究成果の社会実装に向けた活動支援(GAPファンド)
を進めている。
 OUVCにおいても経営人材の確保・育成は喫緊の課題と認識し、2022年後半より、起業人材のコミュニティ形成を行っており、月次のイベント開催、起業案件の紹介を積極的に行い、2023年末までに200名超の起業家候補のコミュニティ形成と実際に起業家としての実績を目的として活動している。起業家を目指す候補者への支援として具体的な研究成果を起業する事業仮説の検証や事業性評価にOUVCは起業家候補者に対し業務委託として資金支援を行い、スムーズな起業への環境整備を行っている。
 明るい材料として、OUVCは年間4名超の大阪大学学部生・院生のインターンを受け入れているが、最近は学生のうちに起業したい(アイデアはすでに保有している)という学生や既に起業する為の事業検証をOUVCで行いたいという起業意欲の高い学生や院生がインターンに応募しており、OUVCとしても2025年から2026年を目途にこれらの学生・大学院生を新卒で採用する検討も始めており、継続的な取り組みにおいて起業家人材の育成も含め環境整備を整えていく事がOUVCの重要なミッションであり、この活動が関西スタートアップエコシステム構築の一助になると考えている。

*この講演要旨は、OFC事務局の責任で編集したものです。

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