『スタディガイド入門マクロ経済学(第4版)』
(大竹文雄著、日本評論社、2001年3月刊)

以下に、各章の正誤問題の解説を追加します。

第2章

4. × 一国に居住する経済全体が、一定期間に生産したすべての財・サービスの付加価値額の総額
17. × 政府から家計への移転は国内総生産に含まれる。


第3章

1. × 短期においては総供給曲線は現在の物価水準で水平な直線である。
3. × 長期均衡においてはGDPの水準を決めるのは供給側の要因である。

第5章

3. × 貨幣の資産需要は利子率が上昇すると減少する。
4. × 貨幣の取引需要は、所得が増加すると増加すると考えられる。
6. × 貨幣市場の均衡は実質マネーサプライと実質貨幣需要が均衡するところで達成される。
9. ハイパワードマネーの増加はその通貨乗数倍だけマネーサプライを増加させる。
11. × 法定準備率の引き上げは、通貨乗数を低下させ、マネーサプライを減少させる。
16. × 公開市場操作はハイパワード・マネーの変化を通じてマネー・サプライを管理する手段である。

第8章

1. × フィッシャー方程式によれば、名目利子率は実質利子率と期待インフレ率の合計になる。期待インフレ率がマイナスであれば、名目利子率は実質利子率より低くなる。
2. × 素朴な貨幣数量説においては、マーシャルのkは一定であると考えられている。
3. × 経常収支の黒字は、国内貯蓄から国内投資を差し引いたものである。
6. × 世界利子率の上昇により、国内投資が減少するので経常収支の黒字は増加する。
7. 増税により、総需要が減少するから、均衡を達成するためには純輸出が増加する必要がある。すなわち、実質為替レートが減価することで、需給の均衡が達成される。
8. 長期均衡のモデルでは、経常収支は国内の貯蓄・投資差額で決定されているので、輸入制限が行われても変化しない。外国の輸入制限の強化により、日本の輸出は低下するが、その分円安により日本の輸入も低下する。
10. × 投資関数には、名目利子率から期待物価上昇率を引いた実質利子率が入る。
11. × 名目利子率の関数、貨幣保有の機会費用はインフレによる目減りと実質利子率の合計。

第10章

2. × 完全雇用の水準でも摩擦的失業や自発的失業があり、そこで成立する失業率が自然失業率である。
3. × 将来の金融政策に関する人々の期待等の他の要因も影響をあたえる。
4. 現実GDPが完全雇用GDP以下にならないとインフレーションは低下しない。
5. GDPが完全雇用GDP以上にあるとインフレ率の上昇が生じるためインフレ供給曲線が上方にシフトする。GDPの水準を維持するためにはインフレ需要曲線の上方シフトを続けなければならない。
6. インフレ供給曲線の傾きが大きい場合には、さまざまなショックが生じた場合でも完全雇用GNPへの調整期間が短くなるので政策介入の必要性は低い。
7. × 供給ショックでは物価の上昇と生産量の減少が先におこる。
8. × フィリップス曲線は、実証的な経済変数の相関関係を後づけたものであり、当初は理論的基礎をもつものではなかった。
9. ×

マネタリストの主張によると、フィリップス曲線は期待が修正される長期においては、失業率が自然失業率に一致するため、垂直の状態になることが示される。この状態においては自発的失業しか存在しえない。

10. × 合理的期待形成は自然失業率仮説をより進めたもので、経済政策の無効性を主張する。

第14章

1. × リアル・ビジネス・サイクル理論は、実質GDPは恒に完全雇用水準に等しいと主張している。
2. × 異時点間の労働代替では、実質利子率が高いと労働供給が増加すると考えられている。
3. × 財政支出の変動が実質利子率を変動させるので、異時点間の労働代替によって生産量が変動すると考えられている。
4. 労働供給の異時点間の代替があれば、生涯のうち、賃金率や利子率の高いときにより多く働くという行動が生じる。したがって、賃金の上昇が一時的であれば、その期により多く働き、来期はレジャーを楽しむことが合理的である。賃金上昇が永久に続くのであれば、他の期の労働供給を減らしてまで、今期により多く働く必要はない。
5. × 実質利子率が高いと今期働いて得られる賃金を高い利子率で運用して生涯所得を高めることができるので、より多く働くことになる。
7. ソロー残差による技術進歩率の変動と現実の景気循環の間に密接な関係があることは、リアル・ビジネス・サイクルの理論と一致する。
8. × 「社内失業」の存在が、技術進歩率の変動を過大評価するという指摘は、技術進歩と景気循環の相関を主張するリアル・ビジネス・サイクル理論に対する批判である。
9. × 新しい古典派マクロ経済学者は、失業者は職探しのために自発的に失業を選択した人や、余暇を選択した人が失業給付を受け取るために、求職行動をして失業者を名乗るために、景気循環と失業率の相関が生じるとしており、労働市場は常に均衡していると主張している。
10. リアル・ビジネス・サイクル理論では、常に労働市場は均衡しているので、現実の労働投入量は労働供給曲線と労働需要曲線の交点で決定される。
11. リアル・ビジネス・サイクル理論では景気からマネーサプライの逆因果関係を主張する。
12. × ソロー残差は技術ショックの大きさを計測するのに使われる。
13. × 新しい古典派経済学によれば、経済はつねに市場が均衡している状態であり、経済変動は完全雇用GDPの変動であるから、財政金融政策によって変動を小さくする必要はない。
14. × ニュー・ケインジアンは賃金や価格が硬直性を人々の合理的行動の結果として導きだそうとしている。賃金や価格の硬直性を仮定したのは伝統的ケインジアン。
15. × ニュー・ケインジアンは、独占競争的な状態でメニューコストの存在や、価格設定時期のズレが価格の硬直性をもたらすとしている。
16. × 効率賃金仮説とは、マーケットレートよりも高い賃金を支払うことで、労働者の生産性が高まるために、企業の利潤が増加するという考え方である。

第15章

1. × 完全雇用が達成されていない状態では望ましくない。
2. × マネーサプライが一定の場合には民間投資がクラウド・アウトされるため(ヒックス・メカニズム)、必ずしも支出額以上にGDPが上昇するとは限らない。
3. マネーサプライの上昇によってLM曲線が右にシフトするため金利の上昇が生じない。
4. × 完全雇用財政赤字で判断すべきである。
5. × 公債残高の増加が富の増加と人々によって認識された場合には、長期間にわたって支出を増加させることになる。
6. × 恒常所得仮説によれば減税政策が一時的であるとみなされる場合には消費は影響を受けない。
7. × 国債残高の成長率が名目GDPの成長率よりも低ければ財政赤字を永久に続けることは可能である。
8.

減税による財政赤字の増加は、消費に影響を与えないので可処分所得の増加分が貯蓄の増加になる。

9. × ブキャナン=ワグナーの批判は議会制民主主義体制のもつ体質がケインズ的政策の正しい運用を妨げているというものである。
10. × LM曲線が垂直な場合、財政政策は無効である。
11. × LM曲線を右下方にシフトさせるため、利子率を低下させ、GDPを増加させる。
12. × 貨幣需要の利子弾力性が大きいとLM曲線は水平に近くなるため金融政策の有効性は小さくなる。
13. 投資の利子弾力性が小さいとIS曲線は垂直に近くなるため金融政策は無効になる。
14. 古典派では、貨幣ヴェール観とよばれるように貨幣供給は実物部門に影響を与えないとされている。
15. 貨幣需要が利子率の関数であるため、マーシャルのkは利子率にも依存して変動する。