公開講義|講義要旨

講義名

公開講義「産業再生と企業経営」 平成16年度2学期

講義要旨

「開講の辞」
大阪大学経済学研究科 阿部 武司 氏

阿部 武司 氏

 


 第1回 10月5日

「デスバレー現象と産業再生」
(株)三菱総合研究所 主席研究員 井上 隆一郎 氏(大阪大学大学院客員教授)

井上 隆一郎 氏

日本型デスバレー現象を産業の実態をもとに「高い技術力を産業競争力に転化できない状態」と定義づけ、日本の製造業のデスバレー化を分析、解説された。さらに、三菱総研での上場製造企業へのアンケート・聞取り調査から、問題点(需要表現、技術経営、知識連鎖)を指摘し、デスバレーに陥らない企業の特性を分析し、
・トライアングル(三つの問題点)の有機的結合
・つなぎプラットフォームの形成・創設
・技術経営戦略的アウトソーシング
・連合体形成による活性化
などの再生の戦略的方向を示唆された。


 第2回 10月12日

「技術経営と戦略」
大阪大学経済学研究科 教授 金井 一頼 氏

金井 一頼 氏

事業の成熟化からの脱出のために新規事業創造が必要となり、技術革新が求められている。経営戦略の一環で技術戦略が重要視されるが、その技術は経営戦略の資源として使われると同時に戦略を創造するためにも重要なものである。ベンチャー企業の成長・発展のプロセスからみて、事業の成熟期に技術革新が行われないとデスバレー現象に陥ってしまう。技術革新により、デスバレーを克服し企業は成長していくが、このとき、技術経営のあり方が問われる。革命的革新により、創造的破壊‐新市場の創造が企業発展には欠かせない。
競争優位性獲得のために技術戦略が練られるが、技術開発のやり方は①伝統的R&D⇔ベンチャー的、②内部⇔外部、③競争⇔強調の3次元で表せ、どのように選択するかが戦略である。また、コア技術の確立も技術戦略の大きな課題である。 コアの事例としてシャープの液晶、キャノンのバブルジェットを挙げる。コア技術(製品)があることで、競争優位が確保できる。企業戦略として連携を考えるのにも、その中核に技術が据えられる。
これまでの伝統的技術革新の進め方と違った技術革新のあり方が求められている。


 第3回 10月19日

「産業再生と「技術者力」
フィフティー・アワーズ代表取締役 水島 温夫 氏((株)三菱総合研究所客員研究員)

水島 温夫 氏

5つのフォースで企業を変える。

戦略構築力…儲かるシナリオのもとでの技術・製品開発が必要であり、事業戦略とR&Dの連動が欠かせない。日本企業の勝てるパターンは4つしかない!と認識し、戦略をたてるべきである。
反射行動力…勝ちパターンごとに行動モデルの定石を知ることが肝要。
技術者のアジリティー(俊敏さ)が必要になる。
擦り合わせ・組み合わせ力…日本企業では擦り合わせがないと勝てないと断言。
内部から継続的にイノベーションを生み出し、内部の経営資源を最大活用できるようにする。
「場」力…組織の方向付け、新製品・新事業開発のためのコンセプトづくりの「場」が必要。
本気でコミットしているかと意志先行型コンセプトづくりを提唱。
「塊」力…技術の「塊」、ヒトの「塊」の作り方が大切。技術を顧客目線でくくる。
顧客価値モジュールで技術「塊」、顧客価値ベースにヒトの「塊」をつくる。
これら5つのフォースは互いに関連しているが、顧客価値の最大化を実現させるのに不可欠である。これにより、企業は変貌、発展成長していく。


 第4回 10月26日

「技術経営とマネジメント・システム」
大阪大学経済学研究科 教授 淺田 孝幸 氏

淺田 孝幸 氏

プロジェクト・マネジメントが、技術経営を支える重要な方法論となっている。そのプロジェクト・マネジメントを新しいビジネスのやりかた、ハードとソフトの融合、リスクの拡大化の環境下に、マネジメントの統合的な経営方法論として紹介し、最近のこの分野の展開と事例を入れて解説した。その中では、価値マネジメントの導入がキーワードである。プロジェクトからどんな価値が生み出されるか、事前・期中・事後に戦略・ミッションの観点から評価することが重要で、その価値指標として管理会計が貢献していると説いた。

 

 第5回 11月2日

「IT戦略マネジメント」
明治大学経営学部 助教授 歌代 豊 氏((株)三菱総合研究所客員研究員)

歌代 豊 氏

ITを取り巻く企業の現状は、業務ニーズに応えた情報システム整備ができていないし、戦略をITに展開・管理するプロセスが欠けている状態で、業務運営する部分とITマネジメントの溝(ITにおけるデスバレー)を多く抱えている。  ITはオペレーションコスト低減目的から経営・市場情報活用とスピード経営に活用される方向にある。ITマネジメントが体系的でトップが関与する企業類型では、ITにより業務革新を図り経営成果を高める効果の連鎖が見られる。
BSC(バランススコアカード)が戦略とITを結ぶ仕掛けとして有効な手段であり、ITを核に、戦略策定と実行を統合・管理するのに欠かせないとして、その運用イメージや組織のあり方BSCの絡ませ方にまで言及された。


 第6回 11月9日

「ベンチャービジネスにおける技術経営」
大阪大学経済学研究科 教授 小林 敏男 氏

小林 敏男 氏

技術シーズからのベンチャービジネスの事例を紹介するとして、自身が関与して立ち上がっているベンチャービジネスの主役の二人に事例紹介させるユニークな講義であった。

 ~その1~
 (株)アイキャット 西願 氏

西願 氏

大学発ベンチャー創業/操業におけるMOTと題して、優れた技術シーズを持つ大学発ベンチャー創出をどのように進めてきたかを説明、事業立ち上げにあたり、プロジェクトマネジメント手法でMOT(技術経営)を行ってきた。
*MOT=技術と経営が融合し製品化・事業化で、新産業創造に期待が持てる。

 ~その2~
(株)サインポスト 黒川 氏

黒川 氏

医学部の研究成果から、産学連携事業ではなかなか進展しない事業化を独自に立ち上げてきた背景、事業化計画の概要の説明を受けた。


 第7回 11月16日

「クラスターとイノベーションシステム」
(株)三菱総合研究所 主任研究員 石川 健 氏

石川 健 氏

「クラスター」の研究はまだ浅く定義も明確にされてないのが現状だが、'ある特定の分野に属し、相互に関連した企業と機関からなる地理的に近接した集団'とする。クラスターの有効性を生産性向上、イノベーションの誘発、新規事業化の促進の観点から、九州シリコンクラスターを例に解説される。
また、イノベーションについては基礎研究・試験研究・応用研究・技術開発の違いを認識、クラスター内での役割分担し、連携をとりながらで大きな統一目標を掲げた産業戦略の実現をめざすべきと力説された。


 第8回 11月30日

「ベンチャーキャピタルと産業再生」
奈良先端科学技術大学院大学 桐畑 哲也 氏

桐畑 哲也 氏

日本の産業再生の有力手法の一つとして、先端科学技術をベースとしたベンチャー企業の輩出が期待される。そのベンチャー創出のフレームワークとして、起業家とそれを支えるパートナー、支援環境が整わねばならず、そのサイクルの好循環が欠かせない。日米の比較を通して、このことを裏づけ、日本での環境整備の遅れを指摘する。
ベンチャー企業創出の有力パートナーとして、ベンチャーキャピタルが欠かせないが、豊富な資金力だけでなく、ビジネスプラン、経営チーム、技術を目利きするだけでなく、モニタリング、経営支援と言ったサポートも欠かせない。
新産業創出には①成長産業、技術を見極め②新たな起業家の輩出を期待③起業家支援システムの整備が急がれる。


 第9回 12月7日

「日本におけるベンチャー創造の実践と課題」
エイケア・システムズ(株) 代表取締役 有田 道生 氏((株)三菱総合研究所客員研究員)

                                      
有田 道生 氏

ベンチャー企業を起こすため何を考えておかねばならないかから始まり、実際の起業のプロセスのなかで、順次検討すべきことを説明される。
資金調達のためにベンチャー・キャピタルとの付き合い方、投資家を知ることの大切さを強調。マーケットの再認識・検証などを通して、信用を確立することが成功の鍵である。会社を創る苦労だけでなく、経営する苦労があることを忘れずにマネジメントの仕組みを確立することが重要とも説かれる。
また、株式会社設立の本質を理解していなかった反省、さらに、事業拡大プロセスにおける追加資金調達、戦略的M&A、株式公開などの課題を自身の体験をベースに順次解説を加えられた。


 第10回 12月14日

「MBOと事業再生」
(株)三菱総合研究所 主任研究員 永野 護 氏

永野 護 氏

日本企業のこれまで辿ってきた事業再生の背景から説き起こし、現状での課題を明確に指摘される。
成長戦略として、事業の早期着手、迅速な再生が不可欠であり、そのため、キャッシュフロー経営への転換が必要。グループ経営における本社機能を見直し、不採算・コア事業や採算のあるノンコア事業の整理まで、グループシナジーが発揮できるよう事業構造改革が要求される。
そこで、事業構造改革の有効な手段の一つとして、MBOが考えられる。MBOの特質を色々列挙し、グループ外の経営資源を有効活用する視点や人材マネジメントの変革などが成功のキーだと説かれた。


 第11回 12月21日

「科学技術政策と産業競争力」
(株)三菱総合研究所 主席研究員 小松 原聡 氏

小松 原聡 氏

過去30年余りの科学技術政策の経緯を振り返り、社会経済との関連を解説するところから始まり、企業経営における研究開発投資のあり方に話が及ぶ。
科学技術政策が新しい分野への技術転換していく大きな役割をしてきたが、公的研究投資や税制優遇措置が民間企業の投資姿勢へ与える影響も無視できない。
業種により差はあるが、R&D投資の大小が企業発展の差になる傾向は大きい。三菱総研での調査結果の紹介での、「製品化率の高い企業の特徴」は注目に値する。


 第12回 1月11日

「日本企業の技術経営の課題 ~パネル討論と総括」
司  会 : 大阪大学経済学研究科 教授 淺田 孝幸 氏
パネラー:三菱総合研究所 政策経済研究センター長 井上 隆一郎 氏
明治大学経営学部助教授 歌代 豊氏
大阪大学経済学研究科 教授 金井 一頼 氏

パネル

最終回はこれまでに講義をした講師陣の中から4人の先生方でのパネル討論で総括して締めくくった。
まず、司会者から、この一連の講義を振り返り整理をしたうえで、キーワードを中心に論点を提起、
①技術力をどう産業力に発展させるか
②人材をどう育て、力を発揮させるか
③ベンチャー・クラスターなどサポートシステムをどう構築・整備、活用していくか
について、各パネラーの意見交換や聴講者からの質問・意見に対する各パネラーの回答や見解発表など、一連の講義まとめにふさわしいパネル討論が展開された。

*記載している肩書きは、講義当時のものです。
*上記の講義要旨はOFC運営委員会・事務局の責任で編集したものです。

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