第4回OFC講演会

演題

「ネットワークの進展とe社会」

開催日時/場所

平成13年9月20日(木)午後6時半~ / 梅田センタービル

講師

大阪大学大学院経済学研究科 教授  真田 英彦 氏

真田 英彦 氏

プロフィール

  • 大阪大学工学部卒、工学博士(大阪大学)。
  • 大阪大学工学部助手、講師、助教授、経済学部教授を経て、現職。
  • 専門分野は経営システム、金融情報ネットワーク、システム監査、戦略論からシステムまで広い分野を扱う。
  • システム監査学会理事、日本社会情報学会理事・関西支部長、電子情報通信学会オフィスシステム研究専門委員会顧問。
  • ICOT人口知能推進委員会委員('85~'87)、日本銀行金融研究所客員研究員('92~'94)なども務める。

会場風景

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講演要旨

●1964年頃の思い出

 情報通信ネットワークは、1964年当時、まだ音声通信である電話が主であった。私は阪大工学部通信工学科で、修士論文を書いていた。直接の指導者は長谷川利治先生(京大名誉教授、南山大学教授)であったが、未来の通信の満たすべき条件などを共に考えていた。通信システムの本質は、釣りの原理からもわかるように、整合条件を満たして信号を確実に伝えることであり、ネットワークとして捉えれば、その条件は4つある(図1参照)。その第1条件を満たす方式として、「ダイナミック伝送方式」を、通信工学科有線工学講座笠原研究室では、手塚助教授・長谷川助手の指導下で提案していた(図2参照)。この方式はアメリカでは米国防省に、Paul Baranが高信頼性軍用ネットワークとして提案し、日本では我々が高効率民用ネットワークとして提案していた。軍用としても民用としても理想的ネットワークであれば当然未来の通信システムとして採用されるのは確実であったが、残念ながら実用化にはコンピュータの速度があまりにも遅く、そのため我々の提案は日本では荒唐無稽とされた。一方米国では、実験システムが作られ、1968年にはUCLA・UCSB・SRI・Utahの4地点を結ぶ世界最初のコンピュータ・ネットワークが試作された。これはARPANETとして知られ、1972年には全米に広がり、後にInternetにまで発展する。


●2008年頃の未来予測

 目を現代に移してみる。情報システムの構成要素であるコンピュータ・通信・人間の3要素を情報システムとしての性能の変化から鳥瞰する。

 現代は、アナログからディジタルへの変化の過渡期であり、ディジタル融合が生むカラフルな多様性を実現する新時代である。すなわちことばの時代の始まりである。ことばの時代には、新しいコミュニティとしての「生命共同体」が生まれる。また企業活動が、情報システムを高度利用することによって、どのように変化したかを見、これからの企業活動がどのように変化するかを考えてみる。まず、企業活動を上流から下流に ①知流 ②商流 ③物流 ④金流 と捉える。すなわち、何が出来るか(シーズ)と何が求められているか(ニーズ)を知り、実際に生産・販売し、消費者にまで届け、代金を頂戴するという流れである。実際に、情報技術を利用して合理化していった成功例は、CIM、POSを実現した商流から始まり、ついで宅配便を実現して輸送システムを合理化して物流を変え、電子決済による金流の合理化が目下進行中である。残された分野すなわち知流は、供給を考えると研究開発やマーケティングだけであるが、「ことばの時代」の主商品である情報関連商品を考えると消費する人間の能力開発が必要である。すなわち知流の合理化には、消費者教育によって市場を創造しなければならない。したがって教育界に大変動が予測される。


●日本文化としての女性哲学の主張

 ところで、生産者側に比して消費者側のコストは消費者一人一人が支払わねばならず、その努力の総量は莫大なものを必要とする。「ことばの時代」には、消費者教育という巨大な教育産業が生まれる。その主役は若者だけではなく、女性・高齢者など全人類が対象となる。巨大な需要である。もう一人の長谷川先生、長谷川晃先生(元大阪大学教授、元コロンビア大学教授、元AT&T特別研究員)がおられ、私が工学部から経済学部へ移籍するのに大賛成してくださった。彼はその時、日本は母系社会であり、父系社会である欧米や中国・韓国などとは社会を動かす基本理念が違うことを指摘して、いずれ日本女性が世界を救うことになると予言された。(セクシュアル・ハラスメント参考資料参照)

 日本社会は、欧米から直輸入された男性中心の企業社会と、古くからある伝統的な女性中心の家族社会との二重構造をなしている。私の故郷である小豆島や香川県津田では、町や村の大勢の住民が最終的に意志決定を一任するのは有力な女性であった。そこには強固な伝統的仕組みがみられた。現代の会社組織は欧米からの直輸入であったから男性優位の枠組みであるが、その構成員である社員の家庭では家計の決定権は奥さんが握っているのが現在でさえ実態である。戦争を紛争解決の基本的手段とする父系社会のイデオロギーや哲学(ユダヤ教、キリスト教、儒教、共産主義、資本主義)に対し、平和を基本手段として、対立する相手を包み込む母系社会にはイデオロギーはない。日本では、男対女の対立から生まれたウーマン・リブではなく、女性が男性を包み込む関係から生まれる平和的手段による解決を試みるべきであろう。父系社会にはイデオロギーがあるのでイデオロギーのない母系社会が対抗しようとすると議論には打ち負かされてしまう。従って、何らかの理論武装として哲学を持つことが必要であるが、最も優れた哲学に老子がある。

 政治活動において情報技術はどのように利用されてきたであろうか?小泉首相のメールマガジンの読者が200万人を超えたという事実はこれからの政治活動が情報ネットワークの利用によって大きく変わり得ることを示唆している。行政活動も電子政府・電子自治体の実現により大きく変わることが期待されている。意思決定や事務効率の大幅な改善は、住民サービスの向上と新たな企業活動を創造するであろう。

 すなわちマルチメディアによる高い表現能力と情報公開による開かれた行政が実現されると、これまでお題目に過ぎなかった政治の目的が、法の整備とその実行部隊の編成にしたがって、現実のものとなる。(ドットジェイピー参考資料参照)


超分散ネットワークの出現

 ネットワークは、階層ネットから超分散ネット(情報共有ネット)へと進化するだろう。
  bluetooth,terminodesなどがすでに見られる。(http://www.terminodes.org/

 この基本概念をマイクロデシック・ネットワーク(Micro Geodesic NetworkをまとめてMicrodesic Network)と名付ける。また女性の言語能力は7:2で男性を凌駕すると言われている。(NHK教育番組)日本社会は、女性支援システムを充実させるだけで、市場創造ができ経済が活性化する。(高度な教養を身に付けた女性が大量に家庭に眠っている)。グローバル化の進展とともに、今後はことばの競争になり、戦争から説得へと変化する。目には目を、戦争だ戦争だと騒ぐブッシュ政権を説得できるのは誰だろうか?

 小泉首相は、懸命の努力をしているが、日本の文化が女性文化であり、基本的理念が女性哲学であると意識しているであろうか?これまでのハイジャックに対する日本的(超法規的)対応は極めて世界常識から考えると外れているにもかかわらず成功してきたではないか?

 まとめると、ネットワークは超分散ネットとなり超高速で世界につながる。その結果、言葉の時代が始まり、新しいコミュニティができる。そこでの主役は、武力をもつ戦士ではなく、言葉を自在に扱い説得する言葉の戦いをする論客である。言葉によって説得するためには広い教養とユーモア・深い倫理と哲学が必要であり、そのexampleには「老子」がある。釈迦・キリスト・老子・聖徳太子・マハトマガンジー・マザーテレサと世界的にも女性哲学を主張する者は数多く存在する。

 ネットワークは、世界を言葉の時代へと大きく変える。

*この講演要旨は、講演者本人が講演の原稿をもとに作成したものです。

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