第27回OFC講演会

演題

「温暖化対策の制度設計―日本が世界に誇れる国内制度と国際制度とは?」

開催日時/場所

平成19年10月24日(水)午後6時半~ / 梅田センタービル

講師

大阪大学社会経済研究所 教授 西條 辰義 氏

西條 辰義 氏

プロフィール

  • 米国ミネソタ大学Ph.D.。
  • 米国オハイオ州立大学経済学部講師、米国カリフォルニア大学助教授、筑波大学講師、米国ワシントン大学政治経済研究所研究員、筑波大学助教授、教授を経て現職。大阪大学サステイナビリティ・サイエンス研究機構教授も兼任。
  • 専門分野:制度設計工学(デザイン・サイエンス)、公共経済学、実験経済学、ニューロエコノミックス。
  • 学術雑誌Economics Bulletin, Experimental Economics, International Economic Review, International Journal of Business and Economics, Review of Economic Design, Social Choice and Welfare, Sustainability Scienceの編集委員。国際連合気候変動政府間パネルのリード・オーサー。The Council of the Society for Social Choice and Welfareのメンバー。市場構造研究所リサーチ・ディレクター。「脳を活かす」研究会・脳を読む分科会会長。日本学術会議連携会員。文部科学省特定領域研究「実験社会科学」代表者。

会場風景

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講演要旨

 日本は、温暖化防止に向け京都議定書の目標達成が可能なのだろうか?EUでは早期に欧州排出権取引制度を導入、試行を始めている。一方、我が国は未だ国民一人ひとりが努力し温暖化ガスを削減し、目標達成すると言い続けているが、目標達成に向けた「枠組み」をデザインする必要があると訴え、国情に合った「枠組み」がどんなものかその骨子を語られた。

 まず、温暖化に関わるデーターを紹介し、CO2排出の現状を分析した上で、京都議定書の特徴を
 ・ 生産をするのに温室効果ガスをたくさん使う物や化石燃料の価格を上げることによって、その消費をおさえる、そうすることによって地球温暖化から守る。
 ・ 議定書は排出量を固定し、その価格で調整するメカニズムを選択した。
と捉え、世間で話題に上っている炭素税は価格を固定し、排出量で調整するメカニズムであるから、京都議定書とは不適合であり、炭素税を骨格とする政策では京都議定書を遵守できない可能性があると判断する。

 したがって、国の枠組みないしは骨組みとして採用すべきことは排出権取引であると言い切る。その上で、国内制度設計として、上流還元型排出権取引制度を提案し、その骨格を例示して解説する。

 化石燃料のほとんどを輸入に頼っている日本では、政府が化石燃料の輸入主体にオークションを通じて排出権を販売。輸入した化石燃料に含まれる炭素含有量と同量の排出権の保有を輸入主体に義務付け、政府の排出権販売収入を輸入主体に還元する。

 この制度では化石燃料が国内に入る時点という意味で「最上流」であるが、下流企業も自らCDM(クリーン開発メカニズム)などを通じて、海外から排出権を確保し、それを上流企業に渡すことでこの制度に参加できる。

 さらには、この上流還元型排出権取引制度で成功し、この制度の国際版であるUNETSを世界に提示し、地球を温暖化から救う制度設計を日本から発信しよう!と結ばれた。

◎推薦図書等・・・西條 辰義 「上流還元型排出権取引制度」(日経エコロジー / 2007年10月号)

*この講演要旨は、OFC事務局の責任で編集したものです。

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