日本OR学会研究部会「不確実性下の意思決定モデリング」 本文へジャンプ
  − Decision-Making Modeling under Uncertainty −


過去の研究部会

第12回
日時: 2月12日(土)12:00〜14:15
場所: 関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G. ハブスクエア大阪 10階 1005号室
テーマと講師:
出席者: 26名
(1) 内示情報を用いた生産計画モデル
上野信行(広島県立大学)
概要:製造業者と部品サプライヤーの間の生産内示システムのモデル化を行った.事前の内示情報とは異なる不確実な需要環境のもとで,在庫品切れリスクの確率制約と線形の生産制約を満足し,製造コストと在庫コストの合計の期待値を最小化する生産量を求める非線形確率計画問題として定式化した.収束性,凸性,最適性,相関性の効果,充足率指標について述べる.生産分野もリスクを考慮してマネジメントを行う時代である.
(2) ニューロDP:次元の呪いの克服?
大野勝久(愛知工業大学)
概要:近年,強化学習あるいは近似DPとも呼ばれている,ニューロDP(neuro-dynamic programming:NDP)が多方面の確率最適制御問題へ適用されている.しかし,SMART,SBPI等の既存のアルゴリズムを最も簡単な生産ラインへ適用した結果,かんばん方式にも全く歯が立たない制御政策しか生成できなかった.そこで,NDPアルゴリズムSBMPIM(Simulation-Based Modified Policy Iteration Method)を開発し,4200万状態を持つMDPへ適用し,最適に設定した各種プル方式の性能がSBMPIMによる準最適政策にどれだけ近いかを調べ,さらにアルゴリズムの高速化を図っている.

*今回は,「価値の創造とOR」研究部会第16回研究会との合同研究会です.また,研究会終了後に酒蔵見学会を行います.


第11回
日時: 1月8日(土)15:30〜18:00
場所: 京都大学工学部8号館3階共同5講義室
出席者: 26名
テーマと講師: 
(1) 大域的に最適な基礎行列の計算法
檀寛成(関西大学)
概要:被写体の三次元形状を復元するために,2 台のカメラで被写体を撮影するステレオ画像計測を行うことがある.このとき,カメラ間の位置・角度の関係は基礎行列という 3 次元正方行列で表されるが,これは画像上の特徴点の対応に基づく非線形最適化問題を解くことにより求めることができる.本発表では,この最適化問題の導出過程について説明するとともに,この問題の大域的最適解を求める手法について説明する.
(2) ORと実用化‐私の歩んできた道‐
吉冨康成(京都府立大学)
概要:「人間社会で使われることのないORは意味がありません.みなさん,ORは実学です.」(OR学会HPより抜粋).企業研究者として13年半,大学に移り15年余り,研究生活を過ごしてきた.実用化に参画した例(組合せ最適化など)と,現在実用化を目指している例(温室効果ガス排出量取引市場のシミュレーションなど)を紹介する.「シミュレーションはORが意識的に取り上げた方法論のひとつなのです.」(OR学会HPより抜粋).私が紹介する例のいくつかは,ORの範疇には収まらないかもしれない.

*今回は,「OR横断若手の会 (通称:KSMAP)」研究部会第6回研究会との合同研究会です.


第10回
日時: 12月11日(土)14:30-17:30
場所: 大阪大学豊中キャンパス法経大学院総合研究棟509セミナー室
出席者: 16名
テーマと講師: 
(1) Pollution Reduction Policies under Uncertainty and Their Costs
辻村元男(龍谷大学)
概要:In this paper, we investigate pollutant reduction policies under uncertainty. We assume that when an agent reduces quantity of a pollutant, it incurs costs. We consider two kinds of policies distinguished by their costs. One policy incurs proportional reduction cost (case 1) and the other incurs fixed and proportional reduction costs (case 2). To solve these problems, we formulate the agent's problems as a singular stochastic control problem (case 1) and a stochastic impulse control problem (case 2), respectively. Using this analysis, we show optimal pollutant reduction policies.
(2) 大阪府におけるバイスタンダーによる心肺蘇生実施状況について
井垣伸子(関西学院大学)
概要:日本では,一般的に,医療のような人命にかかわる問題に対して,コスト最適化を適応することはタブーとされてきたが,海外では,この分野においても,cost-effectiveness に関する様々な調査研究がおこなわれている.本講演では,病院の外において心停止した患者に対する救命措置に対象を絞り,救命効果があがるような心肺蘇生講習会の実施やリーフレットの作成,AEDの設置などについて議論する.


第9回
日時: 8月23日(月)10:00-17:00
場所: 大阪大学吹田キャンパスコンベンションセンター会議室2
出席者: 15名
テーマと講師:
(1) 債務者間ネットワークの構造が与信ポートフォリオの損失分布に及ぼす影響について
朴晃一(大阪大学・経済学研究科) 10:00-10:45
概要:与信ポートフォリオの損失分布を推定する際にはデフォルト相関を適切に反映しなければならない.デフォルト相関には景気変動や業種相関などマクロ構造の相関の他に,債務者間に形成されるビジネス上の依存関係等のミクロ構造の相関が存在する.本研究ではミクロ構造の相関に焦点を当て,債務者間の取引ネットワークの構造が与信ポートフォリオの損失分布に及ぼす影響について考察する.
(2) ライセンスが必要な選択肢が存在する多選択肢ゲームとその解について
桝屋聡(大阪大学・基礎工学研究科) 10:55-11:40
概要:従来の多選択肢ゲームでは,各プレイヤーは任意の選択肢を選択できることが仮定されてきた.しかし現実には,プレイヤーのもつ能力などから,選ぶことができない選択肢が存在することがある.そこで,このような状況を反映できる制限つき多選択肢ゲームとその解について考察する.
(3) 割引率が時間と共に変化する売り出しのゲーム
寺岡義伸(近畿大学・経営学部), 北條仁志(大阪府立大学・理学系研究科) 11:50-12:35
概要:互いに競合的な2人のプレ−ヤーは,その価格が経過時間に対して単峰状に変化する財の販売権を複占している.そして,どちらか一方のプレーヤーがこの財を先に売りに出した時は,価格は不連続的に下落し,その後2人共売り出さない時と相似な単峰状に変化する.このような状況下で各プレーヤーはどの時点で自分の財を売り出せば最適となるかを,2人非0和ゲームで定式化し,平衡点を具体的に導く.
(4) A DEA Model with Identical Weight Assignment Based on Multiple Perspectives
Xiaopeng Yang(大阪大学・情報科学研究科) 14:10-14:55
概要:One function of Data Envelopment Analysis (DEA) is to allow individual DMUs to select the optimal variable weights that are the most advantageous for them to calculate their efficiency scores. But it is especially difficult to select the optimal weights when multiple perspectives exist, as different perspectives tend to select different weights. Our research focuses on seeking an identical weight assignment scheme to cater for multiple perspectives.
(5) コミュニケーション能力分析を用いた学生支援
堂本絵理(広島経済大学・経済学部) 15:05-15:50
概要:本研究では,生徒間同士の出会いのきっかけや,コミュニケーションの取り方など,Webアンケートを用いて調査する.そしてアンケートデータから,生徒間の相関関係を分析し,つながり度合いを図に表す.それらの分析結果や図をもとに,教師と生徒の間の理想的なコミュニケーションの在り方を考える.また,分析結果と成績を照らし合わせることで,教育活動の促進につながると考えられる.
(6) グラフ上の種々の探索問題
菊田健作(兵庫県立大学・経営学部) 16:00-17:00
概要:探索空間が連結な有限グラフであり,目標物を探索するのに探索者の移動費用と調査費用を要するような不確実性下の意思決定問題について述べる.最近の研究や関連した話題を紹介する.さらに,今後の検討課題について述べる.

*今回は,国際数理科学協会の「確率モデルと最適化」研究部会(世話人:寺岡義伸, 北條仁志)との共催です.


第8回
日時: 6月19日(土)14:30-17:30
場所: 大阪大学豊中キャンパス法経大学院総合研究棟509セミナー室
出席者: 23名
テーマと講師:
(1) 離散最適化解法の金融工学への応用
仲川勇二(関西大学・総合情報学部)
概要: 改良代理制約法は,複数制約を持つ大規模な離散最適化問題を厳密に解くことを可能にしました.この改良代理制約法を金融工学のいくつかの非凸最適化問題へ応用し,得られた最近の研究成果について報告します.また,従来厳密に求めることが困難であった金融工学のリスクとリターンの有効フロンティア曲線を,厳密に求めることに成功したことも報告します.
(2) ナッシュ均衡の問題点解消をめざして
中井暉久(関西大学)
概要:ナッシュ均衡が,非協力ゲーム状況における人間行動の分析ツールとして大変重要であることは,よく知られている.一方ナッシュ均衡のもつ問題点も指摘されている.第一に複数のナッシュ均衡点を持つゲームが多く,このときナッシュ均衡は戦略選択の指針とならない.第二にナッシュ均衡戦略以外の多様な戦略選択がなされている現実をどう説明するか.第三にナッシュ均衡点が必ずしもパレート性を満たさないことがある.これらについて今までなされた対応を展望し,新しく主観的ゲームを提唱し,さらに残された課題に言及する.


第7回
日時: 5月8日(土)14:30-17:00
場所: 甲南大学岡本キャンパス 13号館1階 13-107
出席者: 13名
テーマと講師:
(1) 参考効果を考慮した腐敗財の最適割引価格に対する在庫量の影響
小出武(甲南大学・知能情報学部)
概要:
収益管理に関する研究分野において,個々の消費者行動の特性をモデルに組み込む研究が近年盛んである.その一種として,消費者の参照価格に注目した研究が存在する.参照価格とは,対象の商品に対して消費者が心的に有する相場価格を指し,消費者が販売価格の損得を判断する基準として利用される.参照価格は過去の販売価格により形成され,消費者の今後の購買活動に影響を及ぼす.売り手が割引販売によって当日の収益を増加できたとしても,その日の割引販売によって下げられた消費者の参照価格が原因で今後の需要が減少し,長期的な収益は低下してしまうことがある.
本発表では参照価格を考慮した腐食財の割引販売問題を考える.参照価格を考慮 した割引販売問題に関する従来の研究では,商品の在庫量は需要を満たすだけ存在すると仮定しているのに対し,本発表ではその仮定を置かず,在庫量が限定されている状況を対象とする.いくつかの長期的な在庫量のパターンに対して最適販売価格を導出し,在庫量パターンが最適販売価格に与える影響について考察する.
(2) マイノリティゲームの新種「資産価値ゲーム」について
木庭淳(兵庫県立大学・経済学部)
概要:
マイノリティゲームは奇数個のエージェントからなる非協力な繰り返しゲームであり, 金融市場などのモデル化として考えられてきた. 各エージェントは繰り返しのたびにそれぞれが保持する複数個の戦略群のうち、最良の戦略に従って二値(金融市場なら「買い」と「売り」)の選択をしなければならない. その選択の結果, マイノリティすなわち少数派に属したエージェントが勝ちであるとされ, 各エージェントは勝ちの決定を行う戦略に良い評価を与える. 戦略は直前の数回の履歴に対してどのような二値の意思決定を行うかという表形式で与えられている.
従来このマイノリティゲームまたはその変種のゲームによって金融市場の値動きをモデル化する試みが行われてきたが, 値動きが実際の場合に比べてあまりにも安定化しすぎたり, 過去の行動とは無関係なエージェントの行動があったりと, 満足されるようなものは完成していないと考えられる. 今回の発表では, 非常に単純なアイデアを用いて各エージェントが過去の行動を反映した意思決定を行うような利得関数を提案し, シミュレーションなどで他のゲームと比較する.


第6回
日時: 2月20日(土)12:30-15:00
場所: 龍谷大学深草キャンパス21号館4階406教室
出席者: 27名
テーマと講師:
(1) Preemptive Investment Game with Alternative Projects
西原理(大阪大学・経済学研究科)
概要:
This paper derives a preemptive equilibrium in strategic investment in alternative projects. The problem is formulated in a real options model with a multidimensional state variable that represents project-specific uncertainty. The proposed method enables us to evaluate the value of potential alternatives. The results not only extend previous studies but also reveal new findings. Preemptive investment takes place earlier and the project value becomes lower if the numbers of both firms and projects increase by the same amount. Interestingly, a strong correlation among profits from projects, unlike in a monopoly, plays a positive role in moderating preemptive competition.
(2) 広告枠への広告素材の配分方法に関する様々なアプローチ
杉浦登(株式会社大広・ビジネスナレッジ局)
概要:
予算など様々な制約条件下で, 複数の広告素材を広告枠に割付けるという課題について様々な方法を説明致します. 広告素材間で広告枠を巡って競合関係が存在しており, どの広告素材にとってもある程度満足できる割付が求められますが, この全体最適を実現できる方法について考察することが今回の発表内容です.

*今回は, 「ソフトコンピューティングと最適化」研究部会第5回研究会との合同研究会です. また, 研究会終了後にキンシ正宗株式会社にて, 酒蔵見学会を行います.


第5回
日時: 12月19日(土)15:30〜18:00
場所: 京都大学工学部8号館共同5講義室
出席者: 20名
テーマと講師:
(1) 完璧にサンプリングしよう -- 過去からのカップリング
来嶋秀治(京都大学・数理解析研究所)
概要:
本講演では,目標分布からのランダム生成技法,「マルコフ連鎖モンテカルロ法」について述べる.特に,マルコフ連鎖の定常分布への収束スピードに関連して,1996年Propp-Wilsonの提案した「過去からのカップリング法」を,講演者らの開発した「閉ジャクソンネットワークの均衡分布からの完璧サンプリング法」を例に概説する.また,組合せ的対象のランダム生成に関する研究について,近年の展開を述べる.
(2) 私の履歴書
田畑吉雄(南山大学・大学院ビジネス研究科)
概要:
経済, 基礎工, 工学, 再び, 経済の各学部を転々とし, 現在はビジネススクールに属しているという落ち着きのない履歴を背景に, 過去の汚れた研究内容を紹介しつつ, 若い研究者の皆様が私と同じ過ちを繰り返されないための処方箋を兼ねた報告を行う.

*今回は, 「若手によるOR横断研究 (通称:KSMAP)」研究部会第11回研究会との合同研究会です.


第4回
日時: 10月10日(土) 15:00-17:30 
場所: 大阪大学豊中キャンパス法経大学院総合研究棟509セミナー室
出席者: 21名
テーマと講師:
(1) ネットワーク外部性が働く市場に参入する事業者数とサービス普及の関係:人工市場シミュレーション分析
小澤順(大阪府立大学・大学院), 中山雄司(大阪府立大学・経済学部)
概要:
従来, 新たな商品やサービスの普及モデルが, Bassらによって提案されている. Bassのモデルにおいては, 新商品や サービスの採用者を, 他の消費者とは独立して採用を決定する革新者と, 採用者の影響を受けながら商品を採用する模倣者とからなるとされている. さらに, Bassのモデルを用いて, 新商品の普及過程を実データから推計する研究が多くなされている. 一方, ネットワークを前提としたサービスの普及においては, ある消費者にとってのサービスの効用が, 他の消費者のサービスの購入の有無に依存するネットワーク外部性についても議論されている. しかしながら, ネットワーク外部性の働く市場において, 参入する事業者の数とネットワーク外部性の関係について議論されている研究は少ない. そこで, 本研究では, ネットワーク外部性の働く市場のモデルを計算機上に構築し, その市場に参入する競合事業者の数と市場での普及率の関係について計算機シミュレーションを用いて分析する. 本シミュレーションでは, 消費者間のネットワークをWattsらによって提案されているスモールワールドのモデルによって構築する. また, 消費者のサービスに対する効用を, 事業者のサービスによる直接的な効用と, 他の消費者が事業者のサービスに既に加入していることによるネットワーク外部性による効用の和で表現されるもの仮定し, 定式化する. この消費者の効用が, 事業者が設定した初期導入価格より高く, かつ, その効用が最大となる事業者のサービスを消費者は選択しサービスに加入することとなる. 消費者がサービスに加入することで, その消費者とリンク関係のある別の消費者のネットワーク外部性の効用が高められ, サービスが時系列的に普及していく. このモデルを計算機上に実装することで, スモールワールドのネットワークで構築された消費者市場へのサービスの普及過程をシミュレーションによって確認する. 事業者間のサービスが独立している場合には, 市場に参入する事業者の数が増加すると, ネットワーク外部性の効用が低下し, サービスの市場での普及が低下することが予想される. 市場に参入する事業者の数を変化させたときに, 最終的なサービスの普及率が低下していくことを計算機シミュレーションにより確認する. また, 市場に参入する事業者は, 自事業者が提供するサービスの効用を高めるために, 自事業者のみに閉じたサービスだけでなく, 他事業者と連携したサービスを提供することが多い. そこで, 本研究では, 他事業者とのサービスの相互乗入を考慮したネットワーク外部性を定義し, 相互乗入の度合いとサービス普及の関係をシミュレーションで確認する. その結果, 相互乗入の度合いを高めることで, 多くの事業者が参入している市場においても, 普及率を向上させることができることを, 計算機シミュレーションにより確認する.
(2) Analysis of Brand Characteristics of Music Artists in the CD Market: Case of Japan
高橋一樹(筑波大学・大学院)
概要:
本研究は, マーケティング分析上, 重要な位置を占める商品の普及過程を, 市場セグメントに着目してマルコフ・モデル化したものである. その具体例として, 音楽CD市場を対象に,
・過去どのくらいそのアーティストのファンであったか(Artist Loyalty)
・そのアーティストの新しいCDがリリースされたことをどのくらい早く認知して行動するか(Market Sensitivity)
という2つの軸で顧客セグメンテーションを行い, そのセグメント毎に顧客購買行動を表すマルコフ・モデルを開発する. より具体的には, Artist Loyaltyに関する分類としてAddict・Fan・Neutral, Market Sensitivityに対する分類としてUltra Sensitive・Sensitive・Normal・Insensitive, 全体として3×4=12類型に基づくマーケット・セグメンテーションを考える. Artist Loyaltyの3分類については, 『未知』・『既知』・『興味』の3状態, 『興味』から推移する『購買』, 『既知』・『興味』の2状態から推移する『興味なし』の計5状態からなる離散時間マルコフ連鎖を導入する. 各顧客は12類型のどれかに所属するものとし, その購買・非購買行動を所属類型に対応する推移確率行列とMarket Sensitivityによって区別される初期状態に基づいてマルコフ・モデル化し, そうした個別的顧客行動の総和によって市場全体を表現すると同時に, 音楽CD市場における顧客行動やブランド力を構造的に把握する.
*「マーケティングのデータ分析とモデリング・アプローチ研究部会」(主査:田中克明(摂南大学), 幹事:ウィラワン・ドニ・ダハナ(大阪大学))との共催で開催されます.


第3回
日時: 8月12日(水) 11:20-16:50
場所: 神戸大学 瀧川記念会館
出席者: 17名
テーマと講師:
(1) Colonel Blotto Gameについて 11:20-12:00
寺岡義伸(近畿大学 経営学部)
概要: 2人のプレーヤが, 互いに競争的な関係にあり, n種の事業に対面している.2人とも限られた総努力投入量を所有しており,n種の事業の各々への努力配分を決めなければならない.各事業からは2人のプレーヤの配分量の関数としての利得がプレーヤ別に与えられ,両者とも自分が得ることの出来る総利得を最大にするように各事業への配分を決めなければならない.このゲームの源流は古典的なColonel Blotto Gameである.本報告では,Colonel Blotto Game に関して案外知られていない興味深い古典的な成果を紹介し,その内容を分析すると同時に,今後の展開方向も議論する.
(2) ラフ集合を用いた献立推奨システム 13:10-13:50
加島智子(大阪大学 大学院情報科学研究科)
概要: 本発表では,ラフ集合理論を用いた利用者の感性に対する意思決定(選好)支援システムの概要について紹介する.具体的には,料理の献立選好を感性支援のひとつの例として取り上げる.単品料理の情報を管理するデータベースを実装させているWebアプリケーションを紹介する.
(3) 時刻に依存した割引率をもつ2人売り出しサイレント・ゲーム 13:50-14:30
北條仁志(大阪府立大学 大学院理学系研究科)
概要: 本研究では,価値が増加している商品に対して売りに出された瞬間に経過時刻に依存した割引率で不連続に下落するような2人非0和タイミングゲームを提案する.2人のプレーヤが共にサイレント・プレーヤである場合を扱い,このゲームにおけるNash平衡点を導出する.
(4) 提携値に関する不完全情報協力ゲームの構築へ向けて 14:40-15:20
桝屋 聡(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
概要: 古典的な協力ゲームの理論では,全ての提携に対してそれらの提携の得る利得はわかっているものと仮定している.しかし,現実の問題では,いくつかの提携に対する利得がわかっていないことが多い.そこで本研究では,提携値に関する不完全情報協力ゲームの理論の構築へ向けて,その第一歩を踏み出す.
(5) 競合環境下での不確実性を伴う施設配置問題に対する解法アプローチ 15:20-16:00
宇野剛史(徳島大学 総合科学部)
概要: 商業施設の最適配置問題では競合する他の施設の存在を考慮する必要がある.施設配置の目的は利用者から得られる利益の最大化として表されるが,人口推移や景気変動などによる不確実性を伴う.本講演では利用者のもつ購買力を確率変数として表すことで問題を定式化し,最適配置を効率的に導出するための解法を提案する.
(6) Copulaの多重従属な競合リスクモデルにおける識別可能性問題への応用 16:10-16:50
米山寛二(兵庫県立大学 環境人間学部)
概要: 確率論的リスク評価の競合リスクモデルにおける識別可能性問題を解決するために,潜在故障時間の同時分布に対して既知のCopulaを仮定する場合を取り扱う.事例として,(財)厚生統計協会から報告された「生活習慣病に対する死亡数」(女性)に対して,本方法論を適用した結果を示す.

* 国際数理科学協会2009年度年会「確率モデルと最適化」研究部会 研究集会 世話人 寺岡義伸(近畿大学) 北條仁志(大阪府立大学) との共催で開催されます.



第2回
日時: 7月18日(土) 14:45-17:45
場所: 関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G. ハブスクエア大阪 10階 1003号室
出席者: 11名
テーマと講師:

(1) Bandit Problems with Availability Constraints
山崎和俊(大阪大学金融・保険教育研究センター)
概要: A multi-armed bandit problem is studied when the arms are not always available. The arms are assumed to be intermittently available with some state/action- dependent probabilities. It is proven that no index policy can attain the maximum expected total discounted reward in every instance of that problem. The Whittle index policy is derived, and its properties are studied. Then it is assumed that arms may break down, but repair is an option at some cost, and the new Whittle index policy is derived. Both problems are indexable. The proposed index policies cannot be dominated by any other index policy over all multi-armed bandit problems considered here. Whittle indices are evaluated for Bernoulli arms with unknown success probabilities.
(2) 転換社債ファイナンスによる投資問題へのゲーム・オプション的アプローチ
江上雅彦(京都大学大学院経済学研究科)
概要: 新しい生産設備への投資オプションを持つ企業が, この投資を転換社債によって実行する問題を考える. 企業から見れば, 転換社債保有者がいつ転換権を行使するかを考慮に入れて投資判断をしなければならないこととなる. 本稿では一般的なフレームワークで解析的に解くために, ゲームオプション的アプローチにより, 2者による最適停止問題を考え, 転換社債・投資オプションの価値と転換権行使・投資実行の問題を解決する. ついで具体的なケースを想定して, 転換および投資実行の時期の最適解(存在・一意性の証明を含む)およびこの解に関連するvalue function を求める. さらに普通社債での資金調達との比較を行う. よって本稿は, 企業の現行オペレーション, 転換問題, 倒産の脅威, および新規投資問題を同時に扱い, 数値計算に拠らず最適解を求めることを目的とする.


第1回
日時: 5月16日(土) 14:15〜16:45
場所: 関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G. ハブスクエア大阪 10階 1408号室
出席者: 18名
テーマと講師:
(1) 「不確実・不確定性による区間値を考慮したポートフォリオ選択問題」
 蓮池隆(大阪大学大学院情報科学研究科)
概要: Markowitzモデルから始まった金融資産投資に関する数理モデル(ポートフォリオモデル)の開発は,現在,様々な形で発展し,実社会の多方面で適用されている.しかし,投資家の主観性や多様な情報の解釈といった一種の不確かさを,既存の市場データを基にした確率的数理モデルと同時に取り扱った研究は発展途上である. 本発表では,主観性や情報の不確かさを将来収益率に対する確率変数のパラメータに区間値の形で導入したモデルを提案し,その数理的考察を行う.
(2) 「Hotelling複占モデルにおける需要分布とその応用」
 三道弘明(大阪大学大学院経済学研究科)
概要: Hotellingが市場を大きさ1の[0, 1]数直線で正規化表現し,複占市場における価格と移動距離を考慮した店舗の位置に関する均衡を議論してから80年もの歳月が経過した.以来Hotelling市場は,店舗の位置に関する均衡ばかりでなく,店舗の位置を[0, 1]数直線上 の両端に固定したまま(これをHotelling複占モデルと呼ぶこととする)種々の均衡を議論するためにも利用されており,今日でも多くの文献に見受けられる.しかしそこでは消費者の購買行動は確定的であり,ゆえに財の需要量も確定的として取り扱われている.
これに対して比較的小さい商圏を対象とした場合,消費者の購買行動は在庫量の多寡にも影響されるにも拘わらず,上述の確定モデルではこうした状況を適切に表現することは困難である.本研究ではこのような現状に鑑み,消費者の出発時刻,店舗への到着時刻,さらには店舗の営業時間帯を陽に考慮することで, Hotelling市場における需要量が確率的なモデルを提案する.次いで,提案モデルの応用についても考察する.